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膝蓋骨脱臼とは|思春期のスポーツ選手に起きやすい膝の怪我

膝蓋骨脱臼は、スポーツ中によく起こる膝の障害の一つです。特に、ジャンプからの着地など、太ももの筋肉が縮む瞬間に発生しやすいこの障害は、膝蓋骨が膝蓋大腿関節から外れることで起きます。これにより、膝の痛みや膝に力が入らない、膝が不安定になるといった症状が現れ、スポーツのみならず日常生活にも影響を及ぼすことがあります。さらに、関節の骨が部分的にずれている膝蓋骨亜脱臼の場合は、自覚症状がないこともあります。

膝蓋骨脱臼とは

膝蓋骨の役割とは

歩行、走行、ジャンプなどの動作において、膝は極めて重要な役割を果たします。この膝関節は、大腿骨、脛骨、そして通常「お皿」と呼ばれる膝蓋骨(しつがいこつ)で構成されています。膝蓋骨は太ももの筋肉である大腿四頭筋(だいたいしとうきん)と膝蓋腱(しつがいけん)に接続されており、これによって膝の前面が守られるとともに、膝の曲げ伸ばしの動作を助けます。膝蓋骨が脱臼すると、この曲げ伸ばしの機能が上手く行われなくなり、膝が急に不安定になるのです。

膝蓋骨脱臼とは

膝蓋骨脱臼とは、膝蓋骨が膝蓋大腿関節から外れてしまう疾患です。多くの場合、膝蓋骨は外側に外れます。その際には、膝に強い痛みや腫れが生じることがあります。また、脱臼時に、膝蓋骨の内側を支える靭帯(内側膝蓋支帯)が断裂することもあります。また脱臼に骨折を伴う(膝蓋骨の骨軟骨骨折)場合もあります。なお、膝蓋骨不安定症と呼ばれるように、膝蓋骨の脱臼を繰り返すことも少なくありません。

 

膝蓋骨が何度も脱臼したり、部分的にずれる亜脱臼が繰り返されると、膝の他の症状に進行するリスクがあります。これには、膝蓋大腿関節の軟骨がやわらかくなる軟骨軟化症や、関節の変形を引き起こす変形性関節症が含まれます。また、脱臼時に骨折が起こると、骨の一部が関節内を移動し、いわゆる関節ねずみとなって、他の部位に痛みをもたらすことがあります。

膝蓋骨脱臼の症状

膝蓋骨脱臼はどんな痛み?

膝蓋骨が脱臼すると、膝にとても強い痛みがあり、腫れや関節内の出血、歩くのが困難になることがあります。さらに、膝の動きにも制限が出ます。普段から膝の前面に痛みがあったり、膝蓋骨の内側が自然と痛んだり、圧痛(押すと痛みを感じる)があります。急性の脱臼では、膝が崩れて「ポキッ」という感覚を覚えることがあります。

膝蓋骨脱臼はどんな人がなりやすい?

特に思春期の女性に多く発生します。これは、思春期に女性ホルモンが影響して、関節を取り巻く軟部組織がやわらかくなるためと考えられます。年を取るにつれて関節は硬くなり、30歳を過ぎると脱臼する傾向が自然と減少します。また、膝蓋大腿関節の先天的な形態異常などにより膝蓋骨脱臼になりやすい人もいます。

どんな場面で膝蓋骨脱臼になりやすい?

膝蓋骨脱臼は、前述のように、ジャンプの着地の際に太ももの筋肉が強く収縮したときに発生することがあります。また、タックルや交通事故などで膝の内側に直接衝撃が加わった場合にも起こります。また、運動が繰り返されることにより、膝蓋骨の周りの靭帯がゆるんでしまうと、脱臼を起こしやすくなると言われています。

膝蓋骨脱臼が好発するスポーツは?

膝蓋骨脱臼は、サッカー、バスケットボール、体操、ラグビーなどのスポーツでよく発生する傾向があります。

膝蓋骨脱臼の治療・リコンディショニング

膝蓋骨脱臼はどう治すの?

一般的に膝蓋骨を脱臼した際は、早急に医療機関で専門家による徒手整復(手で骨を元の位置に戻す処置)を行います。整復後、約3週間はギプスや専用の装具で固定する必要があります。
自然に骨が元に戻ることもありますが、軟部組織を損傷している可能性も高いので必ず医療機関で受診することをおすすめします。

 

繰り返し脱臼し、痛みが強くて保存療法では改善しない場合は、手術が必要になることがあります。手術では、内側関節包の縮小や外側関節包の切除などを関節鏡を用いて行います。

膝蓋骨脱臼の予防、再発を防ぐには?

競技に復帰する際は、膝関節の慢性的なゆるみや再発のリスクに気をつけます。日常生活で予防するためには、膝蓋骨の外側への脱臼防止の固定具が付いたサポーターを使うことをおすすめします。同様に、テーピングも外側への力を抑制する目的で使用されます。

 

膝が内側に入りすぎて脱臼が起きやすい状況、例えば踏み込む時、着地する時、転倒しそうになった時などには、股関節、膝関節、足関節の正しい動作と向きに注意することも重要です。基本的な動作の再教育やフォームの改善によって矯正を行いますが、特にジャンプの着地時に膝が内側に入る(Knee in)習慣がある場合は、ビデオなどで視覚的にフィードバックを行い、動作中の関節の正しい向きに意識を向けさせることが重要です。

 

膝関節の特異な形態的特徴によっては、サポーターやテーピングでのサポートが必要になる場合があるでしょう。その場合には膝だけでなく、足部や股関節もチェックすることが大切です。シューズやインソールを変更する必要があるケースもあります。

膝蓋骨脱臼からのリコンディショニング

手術を受けた後や大きな軟部組織の損傷により腫れが長引いている場合、最初に取り組むのは膝の動かし方の回復訓練です。病院では、膝の動きを補助する「CPM(他動関節運動器)」を早い段階から使用します。家での初期治療では、仰向けやうつ伏せの状態で膝をゆっくりと曲げ伸ばししますが、無理に動かすよりも正しい位置で動かすことが大切です。

 

荷重をかける許可が出るまでは、アイソメトリックトレーニング(静止した状態で筋肉を使う)で膝の内側の筋肉を強化します。

 

荷重が許可されたら、クローズドキネティックトレーニングを始めます。両足に等しく体重をかけての立位(姿勢)、歩く、片脚立ちなどを行いながら、正しい体の位置、動作中の関節の正しい向きに意識を向けます。大きな鏡のある部屋で行うと良いでしょう。立位の膝伸ばし訓練は、スクワットを始める前に行います。特に膝が内側に入らないように意識しながら、ゆっくりと膝を伸ばします。膝をまっすぐ伸ばす際には、「膝の内側の上の筋肉」に意識を集中させるようにします。 スクワットに関してはこちらの動画を参照ください。

スクワットトレーニング

立位での膝伸ばし運動が、クォータースクワットの深さ(4分の1スクワット)までできるようになったら、ミニトランポリン上でクォータースクワットや、手すりを使ったハーフスクワットに挑戦します。さらに回復が進むと、片脚スクワットやフォワードランジなどを行います。この時は膝が内側に入る(Knee in)状態にならないように注意を払います。バランストレーナーなどを使った片脚立ちの訓練は、膝周辺の筋肉の連携を高めるために行います。

 

リコンディショニングの最終的な目標は、不安定感や痛みなくジャンプ、着地、ランニングができるようになることです。そのため、リズミック・スタビリゼーションが重要になります。最終段階のリコンディショニングでは、サイドステップや方向転換時に膝の動きが乱れないように、動的なアラインメントに焦点を当てた訓練が必要です。

競技復帰のためのバランストレーニング

大腿四頭筋のトレーニング

参考文献

  • 『SPORTS MEDICINE LIBRARY』ZAMST
  • 『対策HANDBOOK ヒザの痛み』ZAMST
  • 医療情報科学研究所 『病気がみえるvol.11 運動器・整形外科』メディックメディア
  • Hayat Z, El Bitar Y, Case JL. Patella Dislocation. [Updated 2023 Jul 4]

記事監修・ドクター紹介

毛利 晃大先生
毛利 晃大先生
順天堂大学医学部卒業、日本救急医学会専門医、日本整形外科学会会員 日本医師会認定スポーツ医、日本バスケットボール協会スポーツ医学委員会所属ドクター

膝の痛みについてより深く学びたい方へ

各痛みに関するドクターによる症状解説、トレーナーによる対処法解説がアーカイブ化されています。
※サポーターの使用によりこれらの症状に効果があるわけではありません。