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鵞足炎とは|ランナーに多い膝の内側の痛み|原因・症状・治療と予防

多くのランニング愛好者が、膝の内側に痛みを感じた経験があるかもしれません。特に膝の内側後方での痛み、突っ張る感じや腫れがあれば、鵞足炎(がそくえん)かもしれません。運動を始めた時に違和感があっても、ウォーミングアップで体が温まると楽になることが多いため、鵞足炎は見過ごされがちです。この記事では、そんな鵞足炎についてまとめます。

最終更新:2026年8月20日

鵞足炎とは

鵞足とは?

鵞足は、ヒザの内側に位置する特定の部位を指し、半腱様筋(はんけんようきん)、薄筋(はっきん)、縫工筋(ほうこうきん)の3つの筋肉の腱が脛骨(すねの骨)に結合しています。この部位はヒザから約5cm下のすねの内側にあります。また鵞足には、摩擦を軽減するクッションとして機能する小さなゼリー状の袋である鵞足滑液包(がそくかつえきほう)が存在します。

鵞足炎とは?

鵞足炎は、ランニングやジャンプ動作などヒザの屈伸による摩擦が繰り返されて、鵞足の腱付着部、あるいは鵞足滑液包が炎症を起こし痛みが生じることです。特に、長距離走、バスケットボール、ラケットスポーツなどで起こりやすいと言われています。水泳も平泳ぎは膝に負担がかかりやすく、発生しやすい競技の一つです。長時間の歩行や立ち仕事、加齢による筋力低下も発症要因となることがあります。
※鵞足炎は、まれに『鷲足炎』と表記されることもありますが、正式には『鵞足炎』です。

鵞足炎の症状

鵞足炎の主な症状とは?痛み・腫れ・違和感の特徴

ヒザの内側(ヒザ関節から5センチほど下の痛み)や少し後ろの部分で感じる痛み、突っ張り感、腫れが主な症状です。特に接地する時に鋭い痛みを感じたり、ヒザを曲げ伸ばす際に引っかかるような違和感を覚えることがあります。
初期段階では、運動を始めると違和感があるものの、ウォーミングアップで体が温まると楽になりますが、繰り返し運動をすると徐々にまた違和感が現れます。症状が悪化すると、カラダが温まっても違和感が消えず、練習の途中で痛みが増し、中断しなければならなくなります。さらに状態が進むと、ウォーミングアップ後も痛みや引っかかり感が残り、練習ができなくなることもあります。慢性化すると安静時にも痛みを感じるようになり、階段昇降や椅子からの立ち上がり動作でも、強い違和感が残ることがあります。

鵞足炎の原因とリスク|なりやすい人の特徴とは?

鵞足炎の主な原因はオーバーユース(使いすぎ)ですが、鵞足を構成する筋肉の疲労が蓄積し、柔軟性が低下すると、そのリスクはさらに高まります。ハムストリングスへのストレスも、原因に挙げられます。
また、鵞足を形成する腱がヒザの内側の骨に擦れやすい状態にある場合も、発症のリスクが増します。特に、ランニング中にヒザが内側にぶれる動きをする人や、もともとX脚気味の人は鵞足炎になりやすい傾向があります。そのため、適切なランニングフォームを身につけることが重要です。
股関節や足首の可動域が狭くヒザに負担が集中しやすい人、筋力バランスの乱れがある人にも発症しやすいと考えられます。

 

なおアスリート以外では40歳から60歳くらいの人、糖尿病や膝の変形性関節症を患っている人、肥満の人は発症のリスクが高いと言われています。

鵞足炎の治療と予防、リコンディショニング

鵞足炎の診断|骨の状態や画像検査で何がわかる?

整形外科では触診により、痛みの有無・部位を特定します(ヒザの内側や鵞足部分に圧痛があるか、腫脹(しゅちょう)の有無、内側ハムストリングスや薄筋を伸ばすことで痛みが起こるかなど)。またX線検査、超音波やMRI検査などで評価します。診断時には、内側半月板損傷(ないそくはんげつばんそんしょう)や腸脛ジン帯炎(ちょうけいじんたいえん)との鑑別も行います。画像診断では滑液包の腫れや炎症の有無が確認されることが多いです。

 

なお、内側半月板損傷、脛骨内顆疲労骨折(けいこつないかひろうこっせつ)、変形性膝関節症(内側の骨棘(こつきょく))などは、ヒザの内側に鵞足炎に似た痛みを起こします。ランニングによるオーバーユースで、ヒザの内側ではなく外側で同様の症状が出る場合は、腸脛ジン帯炎の可能性があります。

腸脛ジン帯炎を詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

鵞足炎の対処と治療法

オーバーユースのため保存療法が中心となります。第一に局所の安静、つまり、ランニングの休止が重要です。急性期には鵞足部のアイシングを行います。次に、半膜様筋、半腱様筋、薄筋などのストレッチングを行い、鵞足の腱の緊張を減らします。並行して、消炎鎮痛剤の外用薬の使用、症状が強い場合は内服薬を使用することもあります。また、超音波などの物理療法により筋肉の緊張緩和を行う場合もあります。

 

保存療法で改善がない場合、鵞足の腱周囲にヒアルロン酸や、ステロイドの注入を行うこともあります。それでも効果がない場合には、鵞足を覆う支帯(したい)や腱鞘(けんしょう)をゆるめる手術も検討されます。

 

また、ヒザの負担を減らすためにサポーターやインソールが推奨されることがあります。症状が慢性化している場合には、医師の指導による理学療法(PT)を推奨されることがあります。

 

※保存療法で約6~8週間で治癒することが多いと考えられますが、重症の場合はさらに時間がかかります。保存療法を数ヶ月続けても痛みが軽減しない場合、または症状が悪化した場合は、必ず専門医を受診するようにしましょう。

鵞足炎を予防するために|おすすめのストレッチ

ストレッチングの習慣化

定期的にストレッチを行うことでカラダの硬さをチェックし、筋肉の疲労度を知ることができます。オーバーユース症候群の多くには予兆があるため、疲労の蓄積を見極め、それらのサインを見逃さないことが大切です。ストレッチをすることによって、疲労の回復を助け、鵞足炎はもちろんのこと、他の様々なケガの予防にもつながります。

 

具体的には股関節の外転筋(がいてんきん)と外旋筋(がいせんきん)である中殿筋(ちゅうでんきん)、大殿筋(だいでんきん)をトレーニングし、内側ハムストリングス(半膜様筋と半腱様筋)と内転筋(薄筋)のストレッチングを行い、下腿が外旋することを防ぐことが鵞足炎の予防策となります。

ハムストリングスのストレッチ

【立位で行うストレッチ】
パターン1:基本の動作
  1. 足のつけ根に手を添える
  2. 胸を張ってお尻を引く
  3. つま先の向きを変え、伸びる部位を変える(15~30秒キープ)
パターン2:前屈動作
  1. ヒザを伸ばしたまま前屈
  2. 胸を張る(15秒~30秒キープ)
パターン3:椅子やベッドなどの利用
  1. 片足を椅子やベッドなどに置き、両手は太もものつけ根
  2. 胸を張ってお尻を引く
  3. つま先の向きを変え、伸びる部位を変える
  4. さらにカラダの向きを変え、伸びる部位を変える

【座位で行うストレッチ】
パターン1:基本の動作
  1. 足の裏をつかむ
  2. 胸を太ももに押し付ける(15~30秒キープ)
    ※カラダが硬い人は手をすねに置き、胸を太ももに押し付ける
  3. つま先の向きを変え、伸びる部位を変える
  4. 脚の位置とつま先の向きを変え、伸びる部位を変える
パターン2:片足を曲げる
  1. 片足を曲げた状態で、伸ばした足を両手でつかむ
  2. 胸を太ももに押し付ける(15~30秒キープ)

【臥位(仰向けの姿勢)で行うストレッチ】
  1. 片足をあげ、両手であげた足のふくらはぎを持つ
  2. 足を高く伸ばす(15~30秒キープ)
  3. つま先を外側に向けて、脚を外側に倒したり、つま先を内側に向けて、脚を内側に倒すことで伸びる部位を変える(15~30秒キープ)
  4. 脚の位置とつま先の向きを変え、伸びる部位を変える

【タオルを使ったストレッチ】
  1. 片足のすねにタオルをかけ、その足を後ろに倒れながらあげる
  2. タオルを手前に引っ張り、足を高く伸ばす(15~30秒キープ)

【ペアで行うストレッチ】
  1. ヒザを伸ばしたまま、かかと・太ももの裏に手を当て伸ばす
  2. 反対側の足が上がるようであれば、ペアの方の足で軽く抑える

内転筋のストレッチ

【立位で行うストレッチ】
  1. 足を開いてヒザを曲げる
  2. ヒザの内側に当てた手で、ヒザを外に開く
  3. 胸を張ってお尻を突き出すように意識する(骨盤前傾)
  4. 肩を前に出して、手のひらを外側に押し出す
  5. 胸を張ってお尻を突き出す姿勢を維持する(骨盤前傾)
  6. ヒザを伸ばすと強く伸ばすことができる
    かつ、胸を張ったまま、さらに深く腰を落とすと強度が上がる

【台を使ったストレッチ】
  1. つま先とヒザが正面を向いた状態で、片足を台の上に置く
  2. もう片方の足のヒザを曲げて、胸を張る
  3. 曲げている方の足首を持つとさらに強く伸ばすことができる
    しっかり胸を張って、深く曲げることで強度が上がる

【座位で行うストレッチ】
  1. 両足をカラダの手前にしっかり引き寄せる
  2. 胸を張って頭の位置を高くする(骨盤前傾)
  3. 両手でヒザを押すことで強く伸ばすことができる
  4. ヒザを押しながら、胸を張って頭を高く

【ペアで行うストレッチ】
パターン1:ヒザを下へ押す
  1. 両足をカラダの手前にしっかり引き寄せる
  2. ペアの方は、ヒザを下へ押す
  3. 胸を張った姿勢を維持させる
    ※ヒザの角度を変えることで、伸びる部位が変わる
  4. 15秒~30秒キープ
パターン2:開脚姿勢
  1. 足を開き、正面に前屈して内転筋を伸ばす
  2. ペアの方は腰を押し、骨盤の前傾を保つ
  3. 15秒~30秒キープ
パターン3:内転筋・ハムストリングス両方をストレッチ
  1. 足を開き、つま先が上を向くように太ももを抑える
  2. 上体を横に倒す。ペアの方は腰を押して、骨盤の前傾を保つ
パターン4:臥位(仰向けの姿勢)で両ヒザを開く
  1. 仰向けになり、ヒザを曲げた状態でヒザを開く
  2. ペアの方はヒザを適度な力で下へ押す。また、手を外側に開くように斜め下方向に押す
    ※ヒザの角度を変えることで、伸びる部位が変わる
  3. 15秒~30秒キープ
パターン5:臥位(仰向けの姿勢)で片ヒザを曲げる
  1. 仰向けになり、片側のヒザを曲げる
  2. ペアの方は上前腸骨稜(じょうぜんちょうこつりょう|骨盤の外側上の骨)あたりを抑えて、ヒザを外側の斜め下方向に押す
  3. 左右15秒~30秒キープ
パターン6:臥位(仰向けの姿勢)で足を内外に動かす
  1. 仰向けになり、ペアの方は脚が浮き上がらないように抑えながら片足を持ち上げる
  2. 上げた脚を股関節から内側に捻る
  3. 上に引き上げながら脚を外側に倒す
  4. 左右15秒~30秒キープ

ランニングフォームのチェック

ヒザを内側に絞りながらのジャンプや着地、ヒザが内側に入り足の爪先が外を向くランニングフォームは、鵞足炎のリスクを増加させます。適切なランニングフォームを身につけることで、ケガを防ぎ、パフォーマンスも向上させることが可能です。効率的に前進することがランニングフォームの基本であり、横方向の動きはカラダに余計な負担をかけます。基本的なランニングフォームをマスターした後に、球技などの横方向への動きを考えることが、ケガの予防とパフォーマンス向上に役立ちます。

ケガを予防する下半身の動き

つま先とヒザを同じ方向に向けてスポーツを行うことで、ケガを予防することができます。逆に、つま先とヒザの向きが違っていて運動を行うと、ケガをする可能性が高くなると言われています。

 

片足スクワットなどのトレーニングを行って動きを確認しながら、そのトレーニングによって筋肉に動きを覚え込ませるのが有効です。片足で立ち、鏡などの前に立って動きをしっかりと確認しながら、つま先とヒザが同じ方向を向くようにスクワットを行ってください(浅い角度でも可)。

 

この時に、立っている側と反対の腰が落ちてしまうと、ヒザが内側に入りやすかったり不安定になったりします。立っている側と反対の腰の位置をしっかりと維持したまま、ヒザを曲げていくことを意識してください。反対の腰の位置をしっかり上げるには、立っている側の外側にある中殿筋などがうまく働かないと上げることができません。体幹トレーニングも行いながら、このようなエクササイズをしていただくことによって、正しい動きを覚え込むことができます。

シューズの選び方やインソールの活用

サッカー、バスケットボール、バレーボールなどの球技を行う選手がトレーニングでランニングをする際、球技用のシューズで走ることで痛みを感じることがあります。ランニングのトレーニングには、ランニング専用のシューズを使用したほうが良いでしょう。またスポーツインソールなどを使い、ヒザの負担を和らげることもおすすめします。

リコンディショニング

競技復帰に向けて、主治医の指導のもとで痛みの状態を確認しながらトレーニングを進めましょう。最初は着地時の衝撃がない水中歩行、水泳、自転車などから始め、走るスピードや距離の急激な増加を避けてください。ただし、鵞足部に負担がかかる平泳ぎは痛みや違和感がある間は避けてください。半膜様筋と半腱様筋、薄筋のストレッチは継続して行います。

 

また上記で紹介した「ケガを予防する下半身の動き」を参考に、膝が内側に入る動きを修正するために、中殿筋、大殿筋のトレーニングを行いましょう。スクワットや階段歩行でも正しい動きを身体に覚えさせる助けとなります。競技復帰後も、患部のアイシングを続けましょう。

※本記事は、身体の状態や不調に関する一般的な情報提供を目的としたものです。記載されている内容は、特定の症状や状態に対する効果を保証するものではありません。症状が続く場合や気になる点がある場合は、医療機関にご相談ください。

参考文献

  • 『対策HANDBOOK 膝の痛み』ZAMST
  • 『Sports Medicine Library』ZAMST
  • 医療情報科学研究所 『病気がみえるvol.11 運動器・整形外科』メディックメディア
  • Prapto D, Dreyer MA. Anatomy, Bony Pelvis and Lower Limb: Navicular Bone. [Updated 2022 Aug 29].
  • Mohseni M, Mabrouk A, Graham C. Pes Anserine Bursitis. [Updated 2023 Apr 22].

記事監修・整形外科医

毛利 晃大先生
毛利 晃大先生
順天堂大学医学部卒業、日本救急医学会専門医、日本整形外科学会会員 日本医師会認定スポーツ医、日本バスケットボール協会スポーツ医学委員会所属ドクター

膝の痛みについてより深く学びたい方へ

各痛みに関するドクターによる症状解説、トレーナーによる対処法解説がアーカイブ化されています。
※サポーターの使用によりこれらの症状に効果があるわけではありません。