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疲労骨折とは|足・すね・大腿骨・骨盤から肋骨まで、体の広い範囲で起こるスポーツ傷害

疲労骨折は、よく見られるスポーツ障害の一つで、同じ箇所に外からの負荷やストレスが繰り返し加わることで発生する骨折です。正常な骨に大きな外力が加わって起きる一般的な骨折(外傷性骨折)とは異なります。

疲労骨折とは

疲労骨折とは?

疲労骨折は、骨が繰り返し機械的ストレスにさらされることで、微細なひびが入り、最終的には骨折に至る傷害です。特に身体活動の頻度や強度が急に増加した際によく見られます。骨は、破骨細胞が古い骨を吸収し、骨芽細胞が新しい骨を形成することで代謝、リモデリングされています。例えば、部活動に参加し、急激なトレーニングを始めた結果、骨のリモデリングが迅速に適応できず、微小な骨折が発生してしまい、やがて明らかな骨折になるのです。

金属疲労と同様に繰り返しの屈伸動作が原因で発生します。

疲労骨折の症状とは?

明らかな外傷がないのに、運動時痛や圧痛が見られる、あるいは慢性的な痛みが限定的な箇所にある場合には疲労骨折の疑いがあります。運動後の翌朝に痛みを感じる場合もあります。

疲労骨折かどうかの判断は?

X線やMRI、CT、骨シンチグラフィーなどの検査を行います。初期の段階や、まだ完全に骨折に至っていない場合にはX線では明らかにならない場合があります。その際は数週間経過後に再検査を行います。MRIやCT検査、骨シンチグラフィー検査の場合には初期段階より異常がみとめられます。

疲労骨折になりやすい状態、なりやすい人は?

衝撃の強いスポーツなど身体活動の急激な増加が代表的な原因と考えられています。その他の内的な要因としては、体調不良、ホルモン異常、月経異常、骨密度の低下、筋肉量の減少、外反膝、骨転移などがあげられます。外的な要因としては、前述した身体活動の急激な増加を筆頭に、グラウンドなど走行面が傾斜または不規則であること、合わないシューズ、古くなったランニングシューズといった履物の不具合などがあります。他にビタミンDとカルシウムの欠乏などもあげられます。

 

また女性アスリートと、過去に疲労骨折を起こした人は発生率が高いという研究があります。

疲労骨折が起きやすい部位と特徴

中足骨疲労骨折

中足骨(ちゅうそくこつ)は疲労骨折が最も好発する部位です。第3中足骨(足の人差し指と足の後方部をつなぐ)、第3中足骨(足の中指と足の後方部をつなぐ)に起きやすく、陸上競技、バスケットボール、バレーボール、サッカー、剣道、バレエなどで起きやすくなります。

 

第5中足骨疲労骨折(足の小指と足の後方部をつなぐ)は足の外側の痛みが特徴的で、ジョーンズ骨折(Jones 骨折)ともよばれており、近年増えています。

 

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脛骨疲労骨折(すねの内側の痛み)

脛骨(けいこつ)の上部1/3(ひざに近い部分)、下部1/3(足首に近い部分)に好発する疲労骨折は走る競技で起きやすく、疾走型とよばれています。2~3ヶ月の局所安静と経過観察が必要で、較的治りやすいと言われています。

 

脛骨の中央1/3部分の疲労骨折はバスケットボール、バレーボールなどで見られ、跳躍型とよばれます。発生数は少ないものの、6ヶ月以上の局所安静でも治らない場合も多く、疼痛コントロール目的等で手術が選択されるケースもあり、難治性とされています。

腓骨疲労骨折(すねの外側の痛み)

腓骨(ひこつ)の上部1/3(ひざに近い部分)で見られる疲労骨折はジャンプ動作の繰り返しで発生しやすく跳躍型とよばれます。下部1/3(足首に近い部分)で見られる疲労骨折は走る競技で多いとされ、疾走型とよばれます。
いずれも1~2ヶ月の局所安静と経過観察が必要と考えられます。

肋骨疲労骨折

肋骨(ろっこつ)の最も上にある第1肋骨の疲労骨折は腕をあげる動作が多いウエイトリフティングや剣道などで見られます。第2~9肋骨の疲労骨折は体の捻りを伴うスポーツで見られます。ゴルフや野球、ソフトボールのスイング動作などが代表的です。

 

以上が好発しやすい疲労骨折の例ですが、その他にも図に記したような部位で起きやすいとされています。

疲労骨折の治療と予防

疲労骨折の治療

疲労骨折の基本的な治療法は、練習を含む運動を停止して安静にし、患部に負担をかけないようにする局所安静です。必要に応じて、松葉杖やギプス、サポーターやインソールを使用して患部の負担を減らし経過観察します。一定期間の安静を保つことで、大半のケースでは手術をせずに回復が見込まれます。ただし、適切な処置を施さずに運動をしたり、放置したりしていると重症化する可能性があります。

 

脛骨跳躍型の疲労骨折や、第5中足骨の疲労骨折(ジョーンズ骨折)などの難治性の場合には手術が選択されることもあります。また、足の舟状骨(しゅうじょうこつ)、距骨(きょこつ)、種子骨(しゅしこつ)、第1中足骨なども高リスクの疲労骨折を起こす可能性のある部位であると考えられます。

 

いずれの場合も、なるべく早く病院で検査して治療や指導を受けましょう。

疲労骨折の予防

 

日頃から以下のようなことをこころがけましょう。

 
  • 疲労を蓄積させない:適度な休憩とリカバリーの時間を確保し、マッサージなども取り入れる。
  • オーバートレーニングをしない:適切なトレーニング量になるように練習内容と時間の調整を行う。
  • ストレッチにより柔軟性を高める:運動前後にストレッチの時間をつくる。
  • 意識的な栄養摂取:骨の健康に必要な栄養素(カルシウムやビタミンD、たんぱく質など)をしっかり摂取する。
  • 足回りの負担を和らげる:足回りの疲労骨折の予防のために、正しいサイズと足の特徴に合ったシューズを選ぶ。必要に応じ足の負担軽減のためにインソールも検討する。

参考文献

  • 『SPORTS MEDICINE LIBRARY』 ZAMST
  • 医療情報科学研究所 『病気がみえるvol.11 運動器・整形外科』メディックメディア
  • May T, Marappa-Ganeshan R. Stress Fractures. [Updated 2023 Jul 10].
  • McCormick F, Nwachukwu BU, Provencher MT. Stress fractures in runners. Clin Sports Med.
    2012 Apr;31(2):291-306.
  • Wright AA, Taylor JB, Ford KR, Siska L, Smoliga JM. Risk factors associated with lower extremity
    stress fractures in runners: a systematic review with meta-analysis. Br J Sports Med. 2015
    Dec;49(23):1517-23.

記事監修・整形外科医

毛利 晃大先生
毛利 晃大先生
順天堂大学医学部卒業、日本救急医学会専門医、日本整形外科学会会員
日本医師会認定スポーツ医、日本バスケットボール協会スポーツ医学委員会所属ドクター

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