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ZAMST Online

2024.03.22

肩関節周囲炎(五十肩)とは|明らかな原因がない肩の痛み

中高年になると、肩関節に炎症が起こりやすくなることがあります。外傷や感染などの明らかな原因がないにもにもかかわらず、肩関節周囲の組織に炎症が生じ、主に「痛み」と「可動域制限(動きの制限)」という二つの症状を呈する症候群があり、これを肩関節周囲炎と呼びます。より一般的には「五十肩」や「四十肩」という名称で知られています。英語では「Frozen Shoulder(凍結肩)」と表現され、文字どおり凍結したかのように可動しにくい状態になることからこの名前がついています。今回は、この肩関節周囲炎(五十肩)に焦点を当てます。

肩関節周囲炎(五十肩)とは

肩関節周囲炎とは、肩に痛みや動きの制限が現れる一連の疾患を指す用語です。この範囲には、上腕二頭筋長頭腱炎や石灰沈着性腱板炎、肩腱板炎などが含まれますが、一般的に「五十肩」として知られる状態が最も多く発生します。そのため、肩関節周囲炎と五十肩はしばしば同じ意味として扱われることがあります。この記事においても、同義語として取り扱います。

 

スポーツとの関係では、ラケットスポーツやバレーボールなどのスポーツによって、肩をオーバーユースし発症することや、またはウェイトトレーニングやコンタクトスポーツ等で腱板の部分断裂等を発症するケースがあるともいわれています。若年者でも発症することはあり、レントゲンやMRIで骨棘や肩腱板、その他解剖上の異常がないかは調べる必要があります。

肩関節周囲炎(五十肩)の症状

肩関節周囲炎(五十肩)の原因は?

肩関節周囲炎(五十肩)の具体的な発症メカニズムは明確には解明されていませんが、組織の経年変化と日々の動作による肩への繰り返し刺激が要因と考えられています。これらの変化により、中高年の方々を中心に肩関節周囲炎(五十肩)が起こり、肩の痛みや腕の上げにくさといった症状が出現するのです。実際には、肩を構成する組織において炎症が発生しており、関節包炎、腱板炎、肩峰下滑液包炎、上腕二頭筋長頭腱炎など複数の炎症が同時に見られるケースも少なくありません。

肩関節周囲炎(五十肩)はどんな痛み?

肩関節周囲炎(五十肩)の症状には痛みと可動域制限がありますが、これらが同時に発生するわけではありません。五十肩は、急性期、拘縮期(こうしゅくき)、回復期という三つの段階を経て進行します。

 

急性期:初期段階である急性期では、痛みが主な症状です。はじめは軽い痛みから始まり、次第に強くなります。この時期は、夜間に痛みが悪化し睡眠障害が起こったり、歯磨きや髪の洗浄など日常生活に支障をきたしたりすることがあります。

 

拘縮期:次に、痛みが和らいでくると肩関節自体が動かなくなる拘縮期に移行します(慢性期と呼ぶ場合もあります)。この期間、肩関節の可動域が制限されるのは、関節の周りの組織が厚くなり、癒着して固まるためです。急性期から拘縮期にかけては、痛みと動きの制限が同時に現れます。

 

回復期:最後の回復期には、徐々に肩の動きが改善し、元の状態に戻り始めます。五十肩が回復するまでには、個人差はありますが約3か月から1年かかることが多く、多くの場合は自然治癒や保存的な治療法で改善します。

肩関節周囲炎(五十肩)の治療・リコンディショニング

肩関節周囲炎(五十肩)はどう治すの?

肩関節周囲炎(五十肩)の多くは、手術を行わずとも改善が期待できます。前述した三つの段階に応じて、非外科的な治療法、たとえば注射や理学療法を組み合わせ、肩の痛みを和らげ、動きを取り戻すことが期待できます。

急性期

急性期には、患部を安静にし、炎症を鎮めることが非常に重要です。「痛みがあっても動かさないと関節が硬くなる」という俗信がありますが、これは誤りです。炎症を悪化させ、結果として症状の長期化を招く恐れがあります。関節への負担を最小限に抑え、肩が最も楽な姿勢を保つことが大切です。

 

安静を保っていても痛みが続く場合は、できるだけ早く整形外科を受診することをおすすめします。消炎鎮痛剤を服用して炎症を抑えることや、湿布など、さらに症状が重い場合には、ステロイドやヒアルロン酸の注入で直接患部に治療を施します。

 

就寝時には安静肢位を保ちましょう。

肘が下がると、痛むことがあります。肘の下に枕、クッションなどを置き、①肘を曲げた腕をやや上げて前に出し、②肘をやや外側に向けて、③手首は軽く外側にまわします。

急性期から拘縮期

拘縮期に移行する段階では、徐々に肩を動かし始めます。医師の許可がでたら、適切な運動を取り入れることで、関節の拘縮を予防し、拘縮期を短くすることができます。しかし、過度な負荷を肩にかけると炎症を悪化させてしまう可能性があるため、無理のない範囲でストレッチを行うことが重要です。

 

この時期に自宅でできるストレッチとして、Codman (コッドマン)体操がおすすめです。この体操は、ご自身の腕の重みを使って、または軽いおもりを持つことで、癒着した腱板や関節包をストレッチする方法になります。

[Codman (コッドマン)体操のやり方]

①肩の痛みがないほうの手を机や椅子の上に置き、腰を曲げて体を前に倒し、肩が痛いほうの腕を床に対して垂直になるように下ろす。
②腕をゆっくりと前後、左右に揺らす。
③時計まわりにまわし、さらに反時計まわりにまわす。

 

※)軽いおもりとなるボールやリストバンド、ダンベルなどを用いる場合もあります。
※)痛みが起こらない程度に腕を動かすのがポイントです。

拘縮期から回復期

痛みがなくなったら、肩の運動機能を取り戻すために、肩を積極的に動かすことを心がけます。肩関節の動きをよくするためには体幹が充分に動くことも必要です。 「体幹の動きをよくする運動」や「スイング体操」がおすすめです。

[体幹の動きをよくする運動]

[スイング体操]

椅子に座って、骨盤から上を右左、左右と揺らします。背中はまっすぐな姿勢を保ち、脇腹が伸びていることを感じるのがポイントです。右左それぞれ数秒間キープします。キープせずリズミカルに左右にスイングしても構いません。

 

「体幹の動きをよくする運動」や「スイング体操」が問題なくできるようになったら、「肩のトレーニング」やタオルを使用した「五十肩のトレーニング」を実施しましょう。これらのトレーニングは、痛みのない腕でガイドするようにして行います。ただし、痛みを引き起こすような動きは避け、痛みがなく動かせる範囲内での運動に留めてください。無理な運動は再発のリスクを高めるため、慎重に行い、トレーニング終了後にはアイシングを行うことが重要です。

肩のトレーニング

五十肩のトレーニング

なお、保存療法での改善が見られない場合、手術療法や全身麻酔下での徒手矯正(マニピュレーション)といった治療法が検討されることがあります。

参考文献

  • 『SPORTS MEDICINE LIBRARY』ZAMST
  • 医療情報科学研究所 『病気がみえるvol.11 運動器・整形外科』メディックメディア
  • Mezian K, Coffey R, Chang KV. Frozen Shoulder. [Updated 2023 Aug 28]

記事監修・ドクター紹介

毛利 晃大先生
毛利 晃大先生
順天堂大学医学部卒業、日本救急医学会専門医、日本整形外科学会会員 日本医師会認定スポーツ医、日本バスケットボール協会スポーツ医学委員会所属ドクター

肩の痛みについてより深く学びたい方へ

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※サポーターの使用によりこれらの症状に効果があるわけではありません。