離断性骨軟骨炎(OCD)とは|成長期のアスリートに多い骨の障害

離断性骨軟骨炎(OCD)は、成長期のアスリートによくみられるスポーツ障害です。発生しやすい部位はヒザが最多で足首・ヒジなどの関節でも起こり、初期や軽症例では保存療法(安静やリハビリ)が中心となります。しかし、症状が進行すると手術や骨移植が必要になる場合もあります。さらに放置すると早期の変形性関節症に進展するリスクがあるため、早期診断・早期対応がとても重要です。今回は、この離断性骨軟骨炎(OCD)についてわかりやすく解説します。
離断性骨軟骨炎(OCD)とは
離断性骨軟骨炎(OCD)は、関節軟骨の下にある骨(軟骨下骨)が壊死し、健康な骨の土台からはがれてしまうことで起こるスポーツ障害です。成長期のアスリートに多く、特に10代から20代男子に多くみられます。好発部位はヒザ・足首・ヒジで、まれに股関節(大腿骨頭)に生じることもあります。
骨や軟骨がはがれて関節内に遊離すると「関節ねずみ(関節内遊離体)」と呼ばれる状態になります。この場合、強い痛みや動かしにくさ、関節が引っかかる「ロッキング」が起こることがあります。こうした症状が出ると、手術で遊離体を摘出する治療が必要になることがあります。
断性骨軟骨炎(OCD)の原因
離断性骨軟骨炎(OCD)の原因としては、スポーツによる「過度の繰り返し動作」の他に「関節への血流不足」も関与すると考えられており、遺伝的要因や骨の発達異常もリスクとしてあげられています。なお、成人でも発症することがありますが、若年層に比べて自然治癒は起こりにくく、保存療法だけでは改善しにくい傾向があります。
離断性骨軟骨炎(OCD)の主な症状と治療
ヒジの肘離断性骨軟骨炎

この障害は「外側型野球肘」とも呼ばれ、10代前半の野球選手に多くみられます。原因は投球動作による負担が多いですが、野球以外にバスケットボールやハンドボールなどのスポーツでも発症することがあります。
主な症状
- 運動中や運動後のヒジの違和感
- 腫れ
- 可動域の制限
- 関節が引っかかる「ロッキング」
こうした症状が出た場合は早期診断が推奨されます。診断にはX線検査が用いられ、必要に応じてMRIで詳しく確認することもあります。
X線での進行段階と治療
- 透亮期:上腕骨小頭に透けて見えるような影(骨透亮像)が現れます。骨の一部が壊れて密度が低下した状態で、主に保存療法(スポーツの中止や安静)が行われます。
- 分離期:透亮像に加えて骨の硬化や骨片の分離がみられます。
- 遊離期:骨片が関節内に遊離し「関節ねずみ」となります。分離期や遊離期では、症状に応じて手術療法が行われます。
保存療法では「数週間から数か月にわたるスポーツ中止」が基本とし、骨癒合を確認しながら段階的に復帰が検討されます。
ヒザの膝離断性骨軟骨炎

ヒザの離断性骨軟骨炎も、10代のアスリートに多く発症します。サッカーやラグビー、バスケットボール、バレーボールといった、ジャンプや急な方向転換・停止動作を伴う競技で起こりやすいのが特徴です。発生部位は、大腿骨のヒザに近い部分(大腿骨遠位部)が多く、まれに膝蓋骨(ヒザのお皿)にもみられることがあります。
主な症状
- ヒザの疲労感や脱力感
- ヒザの痛み
- 関節が引っかかる「ロッキング」
X線での進行段階と治療
- 透亮期:大腿骨遠位部に透けて見えるような影(骨透亮像)が現れます。
- 分離期:透亮像に加えて骨の硬化や骨片の分離がみられます。
- 遊離期:骨片が関節内に遊離し「関節ねずみ」となる段階。分離期・遊離期、または保存療法で改善が難しい場合には、手術療法が行われます。
膝離断性骨軟骨炎の場合は「ヒザに負担をかけるスポーツの繰り返し」で悪化しやすく、症状が軽い段階での活動制限が重要とされています。
まとめ|早期発見が選手生命を守る鍵
離断性骨軟骨炎(OCD)は成長期のアスリートに多い障害ですが、子どもたちは痛みを我慢してしまうことが少なくありません。特に大事な試合を控えていると「言い出せない」「休みたくない」と感じるケースが多いため、本人任せにせず、周囲の大人が小さなサインを見逃さないことが重要です。
たとえば、練習後にヒジやヒザをさすっている、動きがぎこちなくなる、疲労感を口にするなどの様子があれば注意が必要です。早めに異変に気づき、整形外科で診断を受けることができれば、保存療法で回復し競技への復帰も可能になります。逆に受診が遅れると治療が長引き、将来的な競技生活に影響を及ぼす恐れがあります。
選手本人だけでなく、指導者や保護者が一緒に「体のサインを見守る姿勢」を持つことが、将来の選手生命を守る大切な一歩になります。
参考文献
- Mayo Clinic. Osteochondritis dissecans – Symptoms and causes. Mayo Foundation for Medical Education and Research; 2023.
- Cleveland Clinic. Osteochondritis Dissecans (OCD): Symptoms & Treatment. Cleveland Clinic; 2022.
- Carlson VR, Perkins CA, Patel NM. Osteochondritis Dissecans. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2023 Jan.
- 医療情報科学研究所. 病気がみえる vol.11 運動器・整形外科. 東京: メディックメディア; 2022.
- 日本シグマックス株式会社. SPORTS MEDICINE LIBRARY. ZAMST.
記事監修・整形外科医

- 毛利 晃大先生
- 順天堂大学医学部卒業、日本救急医学会専門医、日本整形外科学会会員
日本医師会認定スポーツ医、日本バスケットボール協会スポーツ医学委員会所属ドクター