寒い時期に運動するときの注意事項|冬でも安心して運動を続けるために知っておきたいポイント
冬は体を動かすのが少し億劫になる季節ですが、じつは「運動効果を高めやすい時期」とも言われています。一方で、寒さが体にもたらす影響には注意が必要です。気温が下がると筋肉や関節がこわばり、呼吸器や心臓に負担がかかりやすくなるため、夏と同じ感覚で運動するとケガや体調不良につながることがあります。
本記事では、冬の運動で気をつけたいポイントをわかりやすく解説します。ランニング・ウォーキング・自宅トレーニングなど、どの運動にも共通する内容なので、寒い時期の体づくりにぜひ役立ててください。
寒さが体にもたらす変化を知る
冬の運動でまず理解しておきたいのは、「寒さによって体の状態が大きく変わる」ということです。気温が低くなると血流が減少し、筋肉や腱は柔軟性を失いやすくなります。その結果、普段なら問題のない動きでも、筋肉の張りや関節の痛みにつながることがあります。
また、冷たい空気を吸い込むと気道が刺激され、咳や息苦しさが出やすくなることがあります。これは運動誘発性気管支収縮とも呼ばれ、冬のランニングなどで多く見られる症状です。
さらに、寒さは血管を収縮させるため、血圧が上がりやすく、若年者と比べ40〜60代では心臓への負担も大きくなりがちです。健康のための運動であっても、体に無理がかかるケースが冬には増えるのです。
冬に増えやすい肉離れ・アキレス腱周囲炎・足底腱膜炎
実際に冬場は、運動によるケガの種類にも傾向があります。代表的なのは「肉離れ」やアキレス腱の周囲組織が炎症を起こす「アキレス腱周囲炎」などがあげられます。筋肉が硬い状態で急に動くと、負担が一点に集中してしまうため、軽い運動でも痛みが出ることがあります。
また、足底腱膜炎のような慢性的な足のトラブルを抱えている人は、寒さで腱膜が硬くなり、痛みを感じやすくなることがあります。ランニングや立ち仕事をしている人は特に注意が必要です。
さらに、冬は路面凍結による転倒も起こりやすい季節。とくに、薄い氷が張ることでアスファルトの色が透けて見える状態(ブラックアイス)では、歩いていても滑りやすく、ランニングではなお注意が必要です。
寒い季節でも安全に運動するためのコツ
冬のウォームアップは“いつもより丁寧に”
寒い時期は体温が低いまま動きはじめるとケガにつながりやすいため、ウォームアップを丁寧に行うことがポイントです。軽く関節を動かす運動から、足首回しや腕振り、もも上げなどの 体を大きく動かすストレッチ(ダイナミックストレッチ) を行い、さらに数分の軽いジョギングなどで筋肉が温まった状態をつくってから本格的な運動に移りましょう。
寒い時期の運動は“重ね着”が基本|汗冷え・関節のこわばりを防ぐ服装選び
冬の運動では、肌着・中間着・アウターを組み合わせるレイヤリング(重ね着)が役立ちます。保温性の高いコンプレッションスリーブなどを着用して冷えを防ぎ、必要に応じて脱ぎ着できるようにすることで、体温を適切に管理できます。特に風が強い日は、防風性のあるアウターがあると快適さが大きく変わります。
首・手・耳など“末端の冷え”を防ぐことが冬のパフォーマンス維持につながる
運動のパフォーマンスは「末端の冷え」に左右されます。手袋、ネックウォーマー、耳を覆うアイテムを使うだけでも、体全体の動きやすさが変わります。
足元の冷えには特に注意
足元は地面からの冷気の影響で寒さを感じやすい部位です。ちょっとした休憩時間でも足元が冷え、再開時に思うように身体が動かないこともあります。レッグウォーマーやソックスなどを活用し、寒さ対策を行いましょう。
冬でも脱水しやすい理由|ランナーは特に“隠れ脱水”に注意
寒さで喉の渇きに気づきにくいため、冬の脱水は意外に多いと言われています。特にランナーは、運動前後で定期的に水分補給を意識して行いましょう。
運動後の急な体温低下がケガにつながる
汗が残ったまま風に当たると、急激に体温が奪われます。運動後はすぐに汗を拭き取り、温かいウェアを羽織ることで、冷えによる不調を防ぐことができます。
冬のランニングで意識したいポイント
冬のランニングでは、冷気が呼吸を妨げることがあります。鼻呼吸を意識したり、首元の防寒アイテム(ネックゲイター/筒状ネックウォーマー)越しに呼吸したりすることで、気道への刺激を和らげることができます。
また、最初の10分間はペースを抑えて走ると、心臓への負担が少なく安全にウォーミングアップできます。
路面の凍結には特に注意が必要です。着地の幅を小さく、体の真下に足を置く意識で走ると、滑りやすい日でも安定したフォームを保つことができます。
スポーツ用の寒さ対策アイテムの上手な活用
冬の運動では、保温性のあるインナーや防風性の高いアウターに加え、手足・腰などの冷えやすい部位をサポートするアイテムを取り入れると、快適さが大きく変わります。
最近は「寒い時期の運動を快適にするための保温系アイテム」や「動きやすさをサポートするアイテム」も揃っており、冬のスポーツをより快適に楽しむ助けになります。
冬でも運動を続けるメリット
気温が低い冬は、実は運動による消費エネルギーが高まりやすい時期でもあります。代謝が上がり、運動による爽快感も得やすく、メンタルの安定や体調管理にも良い影響を与えます。
丁寧に体を整えておけば、冬でも安全に、そして春に向けて効率よくトレーニングを積むことができます。
参考文献
- 日本シグマックス株式会社. SPORTS MEDICINE LIBRARY. ZAMST.
- Nystoriak MA, Bhatnagar A. Cardiovascular Effects and Benefits of Exercise. Prog Cardiovasc Dis. 2018.
- Kenney WL. Heat and cold: What does the body do? J Appl Physiol. 2016.
記事監修・整形外科医

- 毛利 晃大先生
- 順天堂大学医学部卒業、日本救急医学会専門医、日本整形外科学会会員 日本医師会認定スポーツ医、日本バスケットボール協会スポーツ医学委員会所属ドクター