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ZAMST Online

2026.06.16

腰痛には「身体の使い方」を正すアプローチを ─ コアトリム ステーション 金岡恒治先生

腰痛の原因はさまざまですが、その多くは日常生活で積み重なる「身体の使い方」と深く関わっています。そして、こうした腰痛は手術や薬だけでは根本から解決しにくいといわれています。ザムストを扱う日本シグマックス株式会社が立ち上げた腰専門のコンディショニング施設「コアトリム ステーション」でメディカルディレクターを務める金岡恒治(かねおか こうじ)先生に、腰痛と運動療法の関係、アスリートにも一般の人にも共通する「正しく身体を動かす」というアプローチについて伺いました。

腰痛の多くは「身体の使い方」と関わっている

腰痛の原因はさまざまですが、その多くは日常生活で積み重なる身体の使い方と深く関わっていると金岡先生は話します。

金岡先生:

腰痛の原因はいろいろありますが、そのほとんどは、身体の使い方がうまくできていないことによって起こります。日常生活でさまざまな動作を続けるなかで、腰に少しずつ負担がかかり、それが痛みとして現れるのです。こうした腰痛は、風邪や病気のように外から原因がやってくるわけではなく、その人の身体が日常の負担に耐えられなくなった状態だといえます。だからこそ、手術や薬だけでは根本的な解決に至りにくいのです。

痛みを抑えるだけでは、なぜ繰り返すのか

「コアトリム ステーション」はどのような特徴があるのでしょうか?

金岡先生:

病院のリハビリのなかにも、機能を高める意識で取り組んでいるところはありますが、多くの場合は対処療法にとどまっています。医療保険の制度のなかで、痛みを取ることは保険でできますが、予防は保険の範疇ではないことが原因の一つでしょう。その人の身体の使い方を根本的に良くする施設が、ほとんど無い状況です。

しかし、痛みをその場で抑えるだけでは、原因となっている身体の使い方は変わりません。そのため、また同じ痛みが起こりやすくなります。 腰の痛みや不調の多くは、いわば脊椎(せきつい)のコンディショニング不良に関わっていて、薬やマッサージのような受け身の対処だけでは、なかなか乗り越えにくいものなのです。

大切なのは、自分の身体の機能を高め、痛みの出にくい動かし方を身につけて痛みを予防することです。コアトリムステーションは、その予防に正面から取り組むための場として運営しています。さまざまな場所を巡っても解決に至らなかった方にとって、ここが脊椎コンディショニング不良の“終着駅”になればと考えています。

整形外科医として予防に取り組む理由

金岡先生は、脊椎の手術を数多く手がけてきた整形外科医でもあります。その立場で予防に取り組むのは、めずらしいことのようにも思えます。

金岡先生:

整形外科の本来の役割は、手術によって悪くなった部分を治すことです。私自身、脊椎外科医として1,000例以上の手術を手がけ、多くの患者さんと向き合ってきました。

手術が必要な場面はもちろんありますが、手術が必要な状態にまで進んでしまった人は氷山の一角にすぎません。その下には、これから腰痛が悪化すると思われる予備軍的な人が数多くいます。手術が必要な状態に至るのを防ぐためにも、運動を通じて身体の機能を高めておくことをもっと普及させなければならないと考えたのです。

コアトリム ステーションで大切にしているアプローチ

コアトリム ステーションでは、腰の痛みを訴える人にどのような流れで向き合うのですか。

金岡先生:

まず、痛みがどの場所で、どのような動きのときに出るのかを丁寧に評価します。必要に応じて画像も確認しますが、多くは診察での所見から負担のかかっている部位を見極め、そこへの負担を減らす動き方を指導していきます。どの動作で痛みが誘発されるかを確かめる、疼痛誘発動作(とうつうゆうはつどうさ)の確認です。

こうして自分の身体機能を正しく評価し、その人に合ったエクササイズを続けていくことが、低下した機能の改善につながると考えています。

そのあとに行うエクササイズには、どのような特徴がありますか。

金岡先生:

何かを強く鍛えるというより、身体を正しく使えるようにすることに重きを置いています。腰痛は、動かし方そのものが適切でないために起こることが多いためです。歩く、かがむ、腰をひねるといった日常の動作が正しくできているかを確認し、無理のない動き方を身につけていきます。

痛みの原因を特定する「疼痛誘発動作」や腰痛運動療法の実践が可能な広い空間

モビリティとスタビリティという視点

スポーツの世界では「体幹(たいかん)」という言葉がよく使われ、インナーマッスルを鍛えるトレーニングも広く知られています。これについてはどうお考えですか。

金岡先生:

体幹を「固める」「強くする」という発想だけで取り組むと、少し方向がずれてしまいます。私がよく使うのは、モビリティとスタビリティという言葉です。なめらかに動かす能力と、しっかり安定させる能力。蛇のようにしなやかに動けて、なおかつ必要な一瞬には固められる──その両方がそろっていることが大切なのです。

例えばラグビーでタックルする瞬間や水に飛び込む瞬間には固める力が要りますが、走る・泳ぐといった動作では、なめらかに動かせるほうが力を発揮できます。

なるほど、強くするというよりも、動かし方が重要なのですね。

金岡先生:

なめらかに動かすには、インナーマッスルが先に適切に働き、そのうえでアウターマッスルを使えることが理想です。ところが、安定させること(スタビリティ)ばかりが強調され、アウターマッスルを固め続けてしまうと、かえって腰の負担になることもあります。

ここで鍵になるのが、筋力そのものよりも、筋肉を細かく調整する脳と神経の働き、いわゆるモーターコントロールです。正しい動きを支えるモーターコントロールは、腰痛や肩こりを抑えるうえでとても重要になります。

運動療法が効果的と診断された場合は、続けて常勤トレーナーによる運動指導が行われる。

運動の5つの要素と、見落とされがちな「スキル」

金岡先生:

運動には、五つの要素があると考えています。古くから「心技体」といいますが、心(メンタル)、技(身体の使い方=スキル)、そして体力(フィジカル)としての筋力・柔軟性・持久力。この五つをバランスよく高めていくことが欠かせません。栄養に五大栄養素があるのと同じで、運動もどれか一つに偏らないことが大切なのです。

このうちスキルは、いわばビタミンのような存在です。ほかの動作をスムーズにするために欠かせませんが、もともと優れた動きが身についている人は、改めて時間をかけなくてもよいかもしれません。自転車に一度乗れるようになると一生乗れるように、身につけた動きの技術は、長く身体に残ると考えられています。

逆に、腰痛や肩こりが出やすい人は、この要素が不足していることが少なくありません。足りない部分を見つけ、高めていくことが必要になります。

腰痛の改善はパフォーマンス向上につながる?

腰痛を改善していく過程は、アスリートのパフォーマンス向上にもつながるのでしょうか。

金岡先生:

腰痛が出ているということは、5つの要素のどこかが不足しているということです。その不足を補えば、結果としてパフォーマンスの向上にもつながります。パフォーマンスを高める方向と、腰痛を良くしていく方向は、実はほとんど重なっているのです。

一方で一般の方でも、これらの機能をいかに高く保つかは鍵になります。機能が低下すると腰痛や肩こりが現れ、それがさらに進むと、将来的に動きにくさへとつながっていくと考えられます。同じ世代でほかの人に症状が出ていないのに自分だけ腰痛があるとすれば、それは機能を見直すサインかもしれません。

痛みをその都度ごまかすのではなく、身体の使い方を整えていく。中高年で運動を続ける人にこそ、この視点を持ってほしいと思います。そのように考えていかないと将来、寝たきりになってしまう可能性もでてきます。

運動の内容はその人の状態に合わせオーダーメイドで適用される。

最後に、アスリートや指導者がまず意識したいポイントを教えてください。

金岡先生:

やはり、五つの要素をバランスよく高めることです。筋力・柔軟性・持久力はある程度数値で測れますが、スキルは評価が難しく、だからこそ見落とされがちです。

たとえば、片足立ちが30秒できるか、不安定な姿勢を保てるか、四つ這(よつば)いで脚を上げられるかといった簡単な確認も手がかりになります。しなやかな動きを養う方法を、日々のなかに取り入れてみるのもよいでしょう。

痛みが引いて競技に復帰したあと、再び痛めてしまう人も少なくありません。

金岡先生:

痛くなって、休んで、おさまった。けれども身体の機能そのものが変わっていなければ、同じ動きを続けるうちにまた傷めてしまいます。ですから、一度腰を痛めた経験のある人ほど、動き方を学び直しておく価値があります。

まとめ

金岡先生の話に一貫していたのは、痛みをその場で抑えるのではなく、身体を正しく動かせるようにしていくという視点でした。そのためには、筋力や柔軟性、持久力に加えて、身体をうまく使うスキルまでを、どれか一つに偏らせることなくバランスよく高めていくことが欠かせません。

こうして身体の機能を高く保つことは、腰痛の予防にも、競技でのパフォーマンスにもつながっていきます。腰痛と向き合う第一歩は、まず自分の身体を知ることにありそうです。

 

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※本記事は、腰痛や運動療法に関する一般的な情報提供を目的としたものです。特定の症状や状態に対する効果を保証するものではありません。痛みが続く場合や気になる点がある場合は、医療機関にご相談ください。

早稲田大学スポーツ科学学術院教授 スポーツドクター
整形外科専門医 脊椎脊髄病医

金岡 恒治 先生
1988年筑波大学を卒業し、筑波大学整形外科講師(脊椎)を務めた後、2007年から早稲田大学でスポーツ医学の教育・研究にたずさわる。シドニー、アテネ、北京五輪の水泳チームドクターを務め、ロンドン五輪にはJOC本部ドクターとして帯同。アスリートの障害予防および腰痛運動療法の研究・普及に従事し、体幹深部筋研究の第一人者。日本整形外科学会専門医、JSPO・JOAスポーツドクター、日本水泳連盟参与、JSPOアスレティックトレーナー部会員、Tokyo2020水泳会場医療統括 ほか。 著書に『脊柱管狭窄症 どんどんよくなる!劇的1ポーズ大全』(文響社)、『腰痛のプライマリ・ケア』(文光堂)、『体幹モーターコントロール』(中外医学社)、『坐骨神経痛 最高の治し方』(文響社)ほか多数。