足底腱膜炎は女性に多い?スポーツ時に知っておきたいリスクと対策

かかとや足裏に痛みを感じる「足底腱膜炎」。長時間の立ち仕事や歩行だけでなく、ランニングやジャンプ動作を繰り返すアスリートにも多く見られます。特に近年、女性アスリートやフィットネス習慣を持つ女性での発症が増加傾向にあることが、複数の研究からうかがえます。本記事では、足底腱膜炎の基本に加え、女性に特有のリスク要因やスポーツ時の注意点、予防法をまとめてご紹介します。
足底腱膜炎とは?
足底腱膜炎は、足の裏にある厚い腱膜である足底腱膜が炎症を起こす状態です。足底腱膜は、かかとから足の指の付け根まで伸びており、足のアーチを支える役割を果たします。この炎症は、歩行やランニングなどの活動中に足底腱膜に過度な負荷がかかることで発生し、特に朝起きた直後や長時間の休息後の最初の数歩で痛みが強く感じられることが特徴です。

女性と足底腱膜炎
米国の大規模疫学調査では、女性は男性に比べて足底腱膜炎と診断される割合が約2.5倍高いことが報告されています。それではスポーツをする女性についてはどうでしょうか。女性アスリートと足底腱膜炎についてのリサーチではありませんが、米軍の兵士を対象とした研究では、女性兵士の足底腱膜炎発症率は、男性の約2倍であることが確認されています。軍隊での激しい運動、長時間の移動や訓練など、足にかかる負荷はアスリートと類似しており、女性において発症リスクが高いことが示唆されます。

足底腱膜炎が起きやすい原因
女性は一般的に足のアーチが低く、関節の柔軟性が高い傾向にあります。そのため、歩行や運動時に足底腱膜にかかる負荷が集中しやすく、炎症を起こすリスクが高まります。特にバレーボールや陸上競技のようにジャンプ動作が多く、足裏への衝撃が繰り返されるスポーツでは、その傾向が顕著です。
さらに、高ヒールや硬いソールの靴を日常的に履くことも、足のアーチ構造を不安定にし、足底腱膜への過剰な負荷を招く要因となります。加えて、女性に多く見られる骨密度の低下、とくに閉経前後の時期には、足底の耐久性が低下しやすく、発症リスクを一層高めると考えられています。
足のむくみは足底腱膜炎のサインかも?見逃せないアライメントの乱れ
「足がむくみやすいのは体質だから」と見過ごしていませんか?実はそのむくみ、足底腱膜炎のリスクを知らせるサインかもしれません。
足のむくみは一般的に血液やリンパ液の循環不良によって起こりますが、近年の研究では、足の骨格や関節の配置、いわゆる「足部のアライメントの乱れ」も大きく関係していることが指摘されています。たとえば、足のアーチが崩れていたり、足首が不安定な状態が続いたりすると、足の筋肉や靭帯に余計な負担がかかり、結果として循環障害によるむくみを引き起こすと考えられます。
むくみが出たら、足部のアライメントが崩れていないかチェックしてみましょう

ニュートラル:直立して足に体重をかけた時に、下腿と足底部を縦線で結ぶと、まっすぐになる状態。
オーバープロネーション:直立して足に体重をかけた時に、下腿と足底部を縦線で結ぶと、内くるぶしが過剰に内側に倒れ込む状態。接地時の衝撃吸収が不十分になります。
スピネーション:直立して足に体重をかけた時に、下腿と足底部を縦線で結ぶと、外くるぶしが外側に倒れこむ状態。接地時の衝撃が足底の外側に集中します。
そしてその状態が長く続けば、足底腱膜への負荷も増し、炎症や痛みを引き起こす足底腱膜炎へとつながるリスクも高まります。足のむくみを単なる疲れの一種と片づけず、足元のアライメントやバランスに目を向けることが予防の第一歩です。
足底腱膜炎を予防するために、今できる5つのセルフケア
女性は足底腱膜炎を発症しやすいとされており、とくに日頃からスポーツに取り組んでいる方や、ヒールの高い靴を履く機会が多い方は注意が必要です。
「最近、かかとや足裏が少し痛むかも」と感じたら、それは足底腱膜からの小さなサインかもしれません。大きなトラブルになる前に、足にやさしい習慣を見直してみませんか?
ここでは、足底腱膜炎の予防につながるセルフケアのポイントを5つに整理してご紹介します。
Point
足部のストレッチと筋力トレーニングを習慣に
ふくらはぎ(特にヒラメ筋)や足底をやさしく伸ばすストレッチを、毎日のルーティンに取り入れてみましょう。朝起きたときや運動前後に行うことで、筋肉や腱の柔軟性が保たれ、足裏への負担を軽減できます。あわせて、足のアーチを支える筋肉を鍛えるトレーニングも効果的です。
Point
靴の見直しをしてみる
普段履いている靴が、実は足への負担を大きくしていることもあります。クッション性があり、足にしっかりフィットする靴を選ぶことが大切です。特にヒールの高い靴を履く習慣のある方は、足の痛みを感じたら一度控えてみるのもひとつの方法。アーチ構造を守るためには、足への「やさしさ」で靴を選ぶことも大切です。
Point
アーチサポート機能のあるインソールを試してみましょう
市販のスポーツ用インソールには、足アーチをサポートし、足底への衝撃を緩和する設計がされているものがあります。特に長時間の立ち仕事や運動が多い方には、インソールを取り入れることで足裏のストレスをやわらげる助けになります。
例えばインソールを使用している女子バレー選手に行ったインタビューでは、「足のむくみが減った」というコメントがありました。 インソールの使用により上述した足部アライメントが整えられた可能性があります。

Point
練習と休息のバランスを見直す
「頑張りすぎ」はアスリートにとって美徳のように思えるかもしれませんが、足にとっては大きな負担です。トレーニングや試合のスケジュールを見直し、しっかりと休息時間を設けることで、足底腱膜にかかる継続的なストレスを軽減しましょう。
Point
骨密度と栄養にも気を配る
とくに女性は年齢やホルモンバランスの影響で骨密度が低下しやすく、足底部の支持力が弱まることがあります。カルシウムやビタミンDをしっかりと摂取し、骨の健康を保つことも、足底腱膜炎の予防には欠かせません。
どれも、すぐに始められることばかりです。自分の足の声に耳を傾けながら、無理なく取り入れていくことが、長くスポーツやアクティブな生活を楽しむための第一歩になります。
参考文献
- 『INSOLE GUIDEBOOK』ZAMST
- 医療情報科学研究所 『病気がみえるvol.11 運動器・整形外科』メディックメディア
- Buchanan BK, Kushner D. Plantar Fasciitis. [Updated 2022 May 30]. In: StatPearls. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2022.
- Nature Scientific Reports. Sex differences in plantar fasciitis incidence and risk. 2023
- U.S. Army Epidemiological Study. Risk factors for plantar fasciitis among active duty soldiers.
- Bulletin of Faculty of Physical Therapy. Association of footwear habits with plantar fasciitis symptoms among female medical students. 2024
- Journal of Orthopaedic Surgery and Research. Foot pain in postmenopausal women and its link to bone density. 2024
- PMC Journal. Foot and ankle pain and alignment-related pathomechanics
記事監修・整形外科医

- 毛利 晃大先生
- 順天堂大学医学部卒業、日本救急医学会専門医、日本整形外科学会会員 日本医師会認定スポーツ医、日本バスケットボール協会スポーツ医学委員会所属ドクター