2025.12.05
三津家貴也さんに聞く「フルマラソンを笑顔で走り切るコツと、足元を見直すということ」 ─ ZAMST Footcraft Fes. in Yokohama ─
2025年10月に横浜で開催された「ZAMST Footcraft Fes. in Yokohama」のステージに、ランニングアドバイザーの三津家貴也さんが登場しました。
会場には、翌日のレースに出場するランナーも多く集まり、「頑張りすぎない走り方」「フォームの整え方」、そして会場で実施された3D足型計測の結果を踏まえた“足元との向き合い方”について、ざっくばらんにお話しいただきました。
マラソンで失敗しないための「入り方」とペースの考え方
明日フルマラソンに出場される方も多くいらっしゃいますが、レースで失敗しないために、まず一番気をつけてほしいポイントはどこでしょうか。
いちばん多いのは“入りのオーバーペース”ですね。気持ちが高ぶって、スタートから普段より速く走ってしまう。マラソンでうまく走れない原因の大半はここにあると思っています。
とはいえ、スタート地点に立つとどうしても上がってしまいますよね。ペースの目安はありますか。
私がおすすめしているのは“笑顔で話せるペース”です。横の人と会話ができるくらいの余裕があるかどうか。息が上がってくるようなら、ほぼ間違いなく速すぎます。42kmという距離を考えると、最初から頑張ってしまったら最後まで持ちません。
笑顔で話せるペースでいいと聞くと少し気持ちが楽になりますね。
そうです。マラソンというと“全力で頑張らなきゃ”というイメージが強いですが、実は“頑張らないで入る”ことの方が大事です。プロ選手でも、序盤は『大丈夫かな、遅すぎないかな』というくらい余裕を持って入ることが多いのではないでしょうか。
「頑張らないランニング」が、続けるためのキーワード
三津家さんは著作の中で「頑張らないランニング」というメッセージも発信されています。これは、どういう思いから生まれた言葉なのでしょうか。
ランニングをやめてしまう方の多くは、“頑張りすぎて疲れてしまった人”なのです。『毎日◯km走らなきゃ』と義務にしてしまうと、段々気持ちが重くなって、走ること自体が嫌になってしまう。そうではなくて、“これくらいなら続けられるな”というラインで積み重ねていく方が、結果的に長く続きます。
頑張るよりも、続けることを優先する、ということですね。
そうですね。外から見ると“すごく頑張っているランナー”に見えても、本人は頑張っている感覚があまりない、という状態が理想ではないでしょうか。無理のないペースで、笑顔で続けていたら、気づいたら走力も上がっていた、という形がいちばん健康的です。
疲れにくいフォームのカギは「お尻を使う」こと
フォームについても、いろいろな情報がありますが、特に市民ランナーの方が最初に意識すると良いポイントはどこですか。
“お尻の筋肉を使う”ことです。多くの方は、ふくらはぎや太ももの前部がすぐパンパンになる走り方をしていますが、ふくらはぎは長く走るのに向いた筋肉ではないですし、太ももの前部はどちらかというとブレーキの役割が強い筋肉です。
お尻が使えるようになると、どんな変化がありますか。
腰の位置が自然と高く保たれて、脚の回転がスムーズになります。接地した瞬間にしっかり体を支えられるので、一歩一歩が安定して、結果として“楽に長く”走れるようになります。ふくらはぎや足首への負担も減るので、故障の予防という意味でも、お尻はぜひ意識してほしいところですね。
ケガを防ぐためのビフォーケアという考え方
日頃のケアについても質問がありました。走り終わった後のストレッチやマッサージは、どうされていますか。
実は、私は“アフターケア”はほとんどしていません。その代わりに大事にしているのが“ビフォーケア”。走る前に動きづくりをしたり、軽い筋トレを入れたりして、フォームが崩れにくい状態を作ってから走るようにしています。
走り終わってからではなく、走る前に整えるわけですね。
はい。走り終わってから慌ててケアするよりも、“走っている最中に変なクセが出ないようにしておく”方が、ケガの予防という意味では効果が大きいと感じています。もちろん、ストレッチやマッサージをするのも良いことですが、まずはビフォーケアをおろそかにしないことが大切だと思います。
3D足型計測で見えた、自分の足の変化
今回は会場で3D足型計測も行っていただきました。ご自身の足を測定してみて、どのような印象を持たれましたか。
左足のアーチが少し低く出ていて、『前は両方とも標準だったのにな』と正直びっくりしました。アーチの高さは、そのときの疲れ具合や走行距離、タイミングによっても変わるので、あらためて“足もコンディションによって変わるのだな”と実感しました。
ご自身で、左右差やアーチの変化を感じることはありましたか。
言われてみると、左足の真ん中あたりが“ぺたっ”とついている感じがあります。今まであまり意識していませんでしたが、『このままだとケガにつながりそうだ』と、少し焦るきっかけにもなりました。
インソールを取り入れるときに意識したいこと
普段のランニングシューズには、インソールを入れていらっしゃいますか。
はい。いちばんよく履くジョギング用のシューズに、インソールを入れています。最初に入れたときは『あ、ここ当たるな』という違和感がありましたが、それは“悪い違和感”ではなくて、“今までのズレを正している感覚”なんだと思っています。
違和感があると不安になる方もいらっしゃると思いますが、その点はいかがでしょうか。
フォームを直すときもそうですが、最初は少し違和感があるくらいが普通だと思います。“今の自分の感覚が100点”という人はほとんどいないはずなので、むしろ違和感が少しあるくらいの方が、正しい方向に近づいていることも多いですよね。大事なのは、無理のない範囲で少しずつ慣らしていくことだと思います。
スピードアップを目指すときのステップ
「もっと速く走れるようになりたい」という声も多いのですが、その場合はどのように練習していけば良いでしょうか。
まずはジョギングをしっかり積み重ねることです。笑顔で話せるペースで距離を踏んでいくと、それだけでも自然とペースは上がっていきます。いきなり速く走ろうとするより、“楽に走れる動きを繰り返す”ことを優先した方が、長い目で見れば伸びやすいと思います。
それでもなかなかスピードが上がらないと感じたときは、どうすれば良いでしょうか。
フォームを少し見直してみることと、ジョグの最後に“流し”を何本か入れることですね。100mくらいを気持ちよくスーッと走る程度で大丈夫です。全力ダッシュではなく、フォームを崩さない範囲でスピードの刺激を入れていくイメージです。
まとめ
今回のトークを通じて印象的だったのは、三津家さんが一貫して「無理をしないこと」「それでも走り続けられる工夫をすること」を大切にされている点でした。
フルマラソンであっても、入りのペースは“笑顔で話せる速さ”に抑えること。フォームでは、お尻の筋肉を使って脚全体の負担を減らしていくこと。そして、走り終わってからではなく、走る前のビフォーケアによってケガのリスクを減らしていくこと。
さらに、3D足型計測を通してご自身のアーチの変化や左右差に気づき、それを次のランニングへのヒントとして捉えていた姿からは、「自分の足の状態にきちんと目を向けること」の大切さも伝わってきました。
関連商品を利用しているトップアスリート
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三津家貴也(ランニング)
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契約選手
Profile
熊本県玉名高校で陸上競技(中距離走)を始める
-インターハイ800m 6位
筑波大学(体育専門学群)、大学院(人間総合科学研究科 体育学専攻)でランニングについて研究
-学生個人選手権1500m 6位
-学術論文を3本投稿(国内誌1本、国際誌2本)
-国際学会発表
RUNNNING SCIENCE LAB でランニングコーチをしながら、陸上競技選手としても活躍
-日本選手権800m出場
-PB:800m 1’50”11、1500m 3’46”33
現在、ランニングアドバイザー、モデル、非常勤講師、インフルエンサーなどマルチに活躍中使用しているサポーター
アームスリーブ
Footcraft CUSTOM BALANCE
Footcraft STANDARD
【三津家貴也さんコメント】
ザムストとは2年半前から活動をご一緒しており、ランニングの普及活動をサポートしていただいていました。
この度、ランニングスペシャルアンバサダーとして新しく契約させていただいたこと、とても嬉しく思います。
より楽しいランニングを普及するためにも、引き続き製品を通してのケガ予防、コンディショニングの訴求、全国各地でのフォーム指導やコミュニティ形成など行っていきたいです。
