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骨盤裂離骨折とは|成長期に発生しやすい骨盤や臀部の痛み

骨盤裂離骨折は、骨が弱い成長期に発生しやすいスポーツ障害で疲労骨折の一つです。サッカーや陸上競技におけるキック動作などにより、瞬間的に大きな筋収縮力が骨盤に作用し、筋の骨盤付着部が急激に牽引されることで、骨盤の一部が裂離する骨折です。

骨盤裂離骨折とは

成長期に骨盤裂離骨折が多いのはなぜ?

成長期の骨盤には成長軟骨とも呼ばれる骨端線が残っています。キックやジャンプ、ダッシュなどの爆発的な筋の収縮により、腱がまだ脆弱な骨端線を引っ張ることで骨端線が骨から分離して骨折となってしまいます。

 

裂離骨折は、成人では成長期のように一般的ではありません。成長に従い、骨端線が閉じたり骨化したりすると、骨端線と骨とのつながりが強くなり、靭帯や筋腱と骨の間で力が伝達するプロセスにおいても、特にその部分が相対的に脆弱ということがなくなるためです。そのため骨盤裂離骨折が生じた同じ箇所で過剰に力がかかった場合、大人においては、靭帯、筋腱、または筋肉を損傷する可能性が高くなります。

骨盤裂離骨折が起きやすい部位は?

最も頻繁に影響を受ける主な部位は、上前腸骨棘、下前腸骨棘、坐骨結節があげられます。

 

上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく):骨盤の横の骨の一番突き出ている部分です。縫工筋と大腿筋膜張筋の付着部位です。この箇所の裂離骨折の多くは、縫工筋(ほうこうきん)の急激な収縮によって生じます。縫工筋は股関節から膝をまたぐ長い筋であり、股関節と膝の屈曲を担います。

 

下前腸骨棘(かぜんちょうこつきょく):股関節の前方部分です。大腿直筋の付着部位です。大腿直筋(だいたいちょくきん)の急激な収縮によって生じます。大腿直筋は、膝の伸展を担う大腿四頭筋のうち、膝関節と股関節の双方に付着する筋です。

 

坐骨結節(ざこつけっせつ):臀部の下部分です。ハムストリング(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)の付着部位です。大腿後面にあり、膝の屈曲を担うハムストリングの急激な収縮によって生じます。ここが裂離骨折した場合には、臀部が痛みます。

骨盤裂離骨折の痛みや症状は?

筋肉が強く収縮しているときに骨盤や臀部に突然痛みを感じます。「ビシッ」という音や感覚を伴う場合があります。他に、股関節周囲の圧痛が認められ、歩行が困難になる場合もあります。なお、坐骨結節の裂離骨折の場合、痛みが軽いことが多く、歩行が可能な場合もあります。そのため、ハムストリングスの肉離れと勘違いして放置してしまうことが多いので、注意が必要です。

骨盤裂離骨折かどうかの判断は?

X線あるいはCTで検査をします。X線では裂離した骨片を確認できます。

骨盤裂離骨折になりやすい状態、なりやすい人は?

骨盤裂離骨折は、サッカー、陸上短距離(特にスタートとゴール時)、ハードル、ジャンプ、柔道や相撲の投げ技、野球のスイングなどで起こりやすくなります。特に中高生である12~18歳の年齢層(ピークは14~15歳)に多く見られます。また、強い筋力を持つ男子に発生しやすいと言われています。

骨盤裂離骨折の治療とリコンディショニング

骨盤裂離骨折の治療

一般的には手術などの外科的療法を必要とせず、保存療法が採用されます。保存療法では、まず安静を保ち、アイシングを約1週間徹底します。痛みが和らぎ、歩行時の痛みがなくなったら歩行を許可します(受傷後2~3週、ただしスポーツは禁止としましょう)。

 

レントゲンで骨の癒合が確認された場合、ランニングを許可します(受傷後2~3ヵ月)。成長期の障害であるため、骨の癒合が完了し、十分な時間が経過すれば、スポーツ活動に支障が出ることは少なく、予後は比較的良好です。

 

最初の一定期間の安静を維持しないと、完全回復の遅れ、再損傷、または慢性症状の発症につながるリスクがあります。

 

癒合不全や、転位が大きい場合、機能障害を伴う継続的な痛み・慢性的な痛みのある場合はスクリューで骨片を接合するなどの手術療法がとられる場合があります。この場合も骨の癒合が確認された場合、ランニング等の復帰が可能となります。

骨盤裂離骨折のリコンディショニング

競技に復帰するまでに数ヵ月かかる場合もありますので、医師の指示に従って復帰してください。受傷後1~2週間は安静とアイシングが必要で、歩行時は松葉杖を使って体重がかからないようにします。通常、3週目くらいから歩行が可能になります。その後、柔軟性を高めるためのストレッチや、関節の動きを伴わないアイソメトリックエクササイズ(等尺性運動)を開始します。

 

4~6週目で水中運動やエアロバイク、軽いジョギングを始めます。水中運動は浮力により体重が軽減され、エアロバイクは座位で行うため、体重が直接かかりません。これらの運動から始め、徐々に体重が負荷となるジョギングに移行します。

 

その後、経過を見ながら競技に復帰しますが、ここでも強度を徐々に上げていきます。例えば、ランニングでは急激なスピードアップやストップは避け、徐々にスピードを上げていきます。サッカーのキック動作も、最初は止まったボールを軽く蹴り、徐々に強く蹴るようにします。

 

再発予防のためには、医師の診断をしっかりと受けた上で競技に復帰するようにしましょう。

参考文献

  • 『SPORTS MEDICINE LIBRARY』ZAMST
  • 医療情報科学研究所 『病気がみえるvol.11 運動器・整形外科』メディックメディア
  • McCoy JS, Nelson R. Avulsion Fractures. [Updated 2023 Aug 7]. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2024 Jan-.
  • Eberbach H, Hohloch L, Feucht MJ, Konstantinidis L, Südkamp NP, Zwingmann J. Operative versus conservative treatment of apophyseal avulsion fractures of the pelvis in the adolescents: a systematical review with meta-analysis of clinical outcome and return to sports. BMC Musculoskelet Disord. 2017 Apr 19;18(1):162. doi: 10.1186/s12891-017-1527-z. PMID: 28420360; PMCID: PMC5395880.

記事監修・整形外科医

毛利 晃大先生
毛利 晃大先生
順天堂大学医学部卒業、日本救急医学会専門医、日本整形外科学会会員 日本医師会認定スポーツ医、日本バスケットボール協会スポーツ医学委員会所属ドクター

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