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梨状筋症候群(りじょうきんしょうこうぐん)とは | 長距離ランニングなどで臀部が痛いと感じたら要注意

梨状筋症候群(りじょうきんしょうこうぐん)は、梨状筋という筋肉が坐骨神経を圧迫し、炎症が起こることで発症します。この症状は、臀部(お尻)や太ももの後ろに痛みやしびれを引き起こし、片側または両側に影響することがあります。軽症の場合には安静と簡単な治療で数日または数週間で治まりますが、適切に対処しないと再発のリスクや、重症の場合には股関節における大腿部の動きが制限されることがあります。

梨状筋症候群とは

梨状筋とは

梨状筋は仙骨に付着し、股関節の動きに深く関わる筋肉です。体の奥深くに位置する「ディープ・インナーマッスル」のひとつで、骨盤の内部にある坐骨神経と近接しています。坐骨神経は骨盤から足に向かって伸びる長い神経で、骨盤から出る部分で梨状筋によって形成されるトンネル状の隙間を通過します。スポーツや長時間の座り姿勢を続けると梨状筋に負担がかかり、筋肉が硬くなることがあります。これにより坐骨神経が圧迫され、梨状筋症候群と呼ばれる痛みやしびれの症状が引き起こされることがあります。

梨状筋症候群と坐骨神経痛の違い|梨状筋症候群とは

坐骨神経痛は疾患名ではなく、坐骨神経が圧迫されることにより、その神経の通り道に沿って痛みやしびれが広がる症状全般を指します。坐骨神経は腰から始まり、骨盤を通ってお尻や太ももの後ろ、膝の下まで伸び、そこからさらにいくつかの枝に分かれて足先まで達しています。このため、坐骨神経が腰の骨(腰椎)や梨状筋のあたりで圧迫されると、その影響が広い範囲に現れるのが特徴です。坐骨神経痛を引き起こす原因としては、以下のような疾患が挙げられます。

 

  • 腰椎椎間板ヘルニア
  • 腰部脊柱管狭窄症
  • 腰椎分離すべり症
  • 梨状筋症候群

 

これらの疾患には、坐骨神経との関わり方に違いがあります。たとえば、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症の場合、坐骨神経の圧迫が腰椎のあたりで起こるため、腰から臀部、足にかけて広範囲に痛みやしびれが及ぶことが多いとされています。

 

一方、梨状筋症候群は、お尻の深部にある梨状筋が坐骨神経を圧迫することにより発症します。このため、症状は主に臀部や太ももに現れ、痛みやしびれが特定の部位に集中するのが特徴です。梨状筋症候群は、筋肉の緊張や損傷、炎症、または筋肉内の傷あとなどによって引き起こされ、通常は数日から数週間の安静と適切な治療で改善することが多いとされています。

梨状筋症候群の主な原因

梨状筋症候群は、梨状筋が坐骨神経を圧迫することで発生します。以下が主な原因とされています。
 

  • 筋肉や周辺組織の炎症(はれ)
  • 筋肉のけいれん(ひきつり)
  • 筋肉内にできた傷あと(ケガや手術などで生じることがあります)

 

これらの原因は、以下のような活動や状況から発生することが多いです。

 

  • 腰や臀部のケガ、転倒や交通事故など
  • 長時間の座位(オフィスワークや長時間の運転など)
  • 階段の上り下りやランニングによる負荷
  • ウォーミングアップやクールダウンをせずに運動すること
  • 過度な運動や同じ動作の繰り返し(長距離ランニングなど)

 

また、坐骨神経や梨状筋の構造が通常とは異なる「原発性梨状筋症候群」というタイプもあります。これは生まれつきの体の構造が関係しており、坐骨神経や梨状筋の位置や形が通常と異なる人に見られることがあります。

梨状筋症候群の症状と治療

梨状筋症候群の症状|どんな痛み?

梨状筋症候群の症状は、臀部や太もも現れることが多く、以下のような感覚が報告されています。

 

  • 鈍い痛み
  • 焼けるような感じ
  • しびれ
  • チクチクとした違和感

 

これらの症状は、以下の活動中に悪化することが多いです。

 

  • 歩行やランニング
  • 階段の上り下り
  • 長時間の座位(長距離運転など)

梨状筋症候群の診断方法

梨状筋症候群は、他の疾患の可能性を除外する形で診断されることが多く、特定の検査方法がないため診断が難しいこともあります。医療機関では、以下の手順が一般的です。

 

  1. 症状や普段の生活習慣についての問診
  2. 過去のケガや病歴の確認
  3. 臀部や股関節、足の動きを確認し、痛みや違和感があるかを確認
    Freiberg testなどの徒手診法(股関節を屈曲させた状態で内旋を加えることで梨状筋が緊張し、痛みが強まるかどうかを観察します)を診断の一助として用いることもあります。
必要に応じて、超音波、CTスキャン、MRIなどの検査が行われ、他の原因がないかも調べることがあります。

梨状筋症候群の治療

梨状筋症候群の治療には、以下のような方法が用いられます。

 

  1. 安静にする
  2. 梨状筋のストレッチや強化を目的としたエクササイズ
  3. 抗炎症薬の服用
  4. マッサージ治療
  5. 筋肉をリラックスさせる薬物療法
  6. 理学療法(ストレッチや筋力強化を中心としたもの)
  7. ステロイド注射やボトックス注射(必要な場合)

 

手術は稀で、他の治療法が効果を示さない場合に限られます。手術で梨状筋を切離して坐骨神経を開放することなどが検討されます。

 

多くの場合、適切な生活習慣の見直しやシンプルな治療で早期に改善されることが期待できます。しかし、適切なケアを怠ると症状が再発しやすく、重症化すると大腿部の動き(外旋や内旋)が制限されることがあります。

症状が改善しない場合には

梨状筋症候群の治療中に、以下のような症状が見られる場合は、医療機関への相談を検討してください。

 

  1. 数週間以上続く痛み
  2. 頻繁に転倒する
  3. 座位時に静止させるのが困難になる
  4. 突然の激しい腰や足の痛み
  5. 急激な筋力低下やしびれ

梨状筋症候群の予防とリコンディショニング

梨状筋症候群の予防

梨状筋症候群を予防し、再発を防ぐためには、以下の点に注意することが大切です。

 

  • 定期的な運動を行い、筋肉の健康を保つ
  • 座る時や立つ時、運転中も良い姿勢を心がける
  • 荷物を持ち上げる際には膝を曲げ、腰を守るようにする
  • 運動前のウォーミングアップと運動後のストレッチを徹底する
  • 長時間座る場合には定期的に立ち上がって歩く

梨状筋症候群のリコンディショニング

競技復帰を目指す際には、完全復帰の前に競技種目ごとの基本動作を用いたテストを行いましょう。梨状筋症候群の場合、しびれが復帰の妨げになることが多いため、慎重にコンディショニングとアフターケアを続けることが再発予防のために重要です。

梨状筋は非常に深い位置にあるため、アイシングを行う際は、横向きに寝た姿勢をとり、熱が効率よく伝わるよう工夫しましょう。深部を温める超音波治療器などを使う場合やマッサージをする際も同様の姿勢がおすすめです。

臀部のストレッチ(その1)

両足を伸ばして座る。

左足は伸ばしたままで、右足のすねを抱え、膝を手前に引き付け、胸を張る。

足先と足首を上げ、お尻が伸ばされているのを感じながら15秒〜30秒キープ。

反対側の足も同様に行う。足全体を胸に引き寄せるなどして、伸ばす位置を調整する。

臀部のストレッチ(その2)

片膝を立てる。

膝に肘を当てて振り向く。その際、肘で膝を軽く押す。顔の向きや、伸ばした足に掛けた足先の向きなどを変えて伸びる位置を微調整する。15秒〜30秒キープ。

参考文献

  • 『SPORTS MEDICINE LIBRARY 梨状筋症候群』ZAMST
  • 医療情報科学研究所 『病気がみえるvol.11 運動器・整形外科』メディックメディア

記事監修・整形外科医

毛利 晃大先生
毛利 晃大先生
順天堂大学医学部卒業、日本救急医学会専門医、日本整形外科学会会員 日本医師会認定スポーツ医、日本バスケットボール協会スポーツ医学委員会所属ドクター

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