ゴルフ肘・テニス肘をくり返さない|痛みが引いた後に取り入れたいセルフケア

前回の記事で紹介した通り、ゴルフ肘やテニス肘は、スポーツや日常動作でのオーバーユースによって、肘まわりの腱や筋肉に負担がかかり、炎症や痛みを引き起こす障害です。このような肘の障害では、初期の安静や軽いストレッチに続いて、回復期には筋持久力と動作耐性を高めるための軽負荷エクササイズが重要だと言われています。また、再発を防ぐためには、前腕だけでなく体幹や股関節を含めた全身の連動性を見直すことも欠かせません。さらに、回復後も軽い運動を続けることで、肘の健康を長く保つことができます。今回は、症状が落ち着いた段階で取り入れたいフォームローラーや握力運動、加えて全身の回旋動作を支えるストレッチについて紹介します。
おさらい|ゴルフ肘・テニス肘基本のストレッチ&リハビリ
基本的なストレッチの詳細については、ゴルフ肘(内側上顆炎)とは?|腕の内側の痛みをやわらげる原因・治療・リハビリ法をご覧ください。これらのストレッチは、筋肉と腱の柔軟性を取り戻すことを目的としています。

回復期におすすめの軽負荷運動
痛みが収まってきたら以下のような軽負荷運動もおすすめです。徐々に筋肉を使いながら動かすことで、患部周囲の筋力と血流を回復させていきます。他には電動刺激マシンなどを使う方法もあります。なお、急性の炎症や痛みがあるうちは無理に行わず、整形外科医や理学療法士・アスレティックトレーナーの判断を仰いでからスタートするようにしましょう。
フォームローラーを使ったストレッチ
フォームローラーに腕を図のように置き、もう一方の手で少しだけ圧力をかけて転がします。肘にまだ痛みがあるうちは止めましょう。この時、前腕の骨(尺骨)に直接圧力がかからないようにします。骨の部分ではなく、腕の筋肉の部分にローラーがあたるようにします。少し手のひらを外側に向けると良いでしょう。

次に親指を下にまわし内側を刺激してみましょう。

指を使って前腕を収縮させる運動
グレープフルーツのような果物やボール、ペットボトルなどを利用する運動です。ボールを離したりつまんだりをくり返します。手のひらで包み込むのではなく、指でつまむようにすることで前腕の筋肉を収縮させます。この運動は握力と前腕屈筋群の再活性化に役立ちます。

ゴルフ肘・テニス肘の再発予防ストレッチ(胸椎と股関節のストレッチ)
先にご紹介した肘周囲のストレッチは定番のもので、とても効果的なのですが、そもそもなぜ肘が痛くなるのかということに注目してみましょう。テニスやゴルフなど回旋動作が入るスポーツにおいて、効果的に体を回せていないと、腕や肘に余計な負担が集中し、痛みを引き起こしやすくなります。胸椎と股関節の動的ストレッチを実施し、十分可動域を確保することで、再発予防をしましょう。
肩と太もも内側のストレッチ(胸椎へのアプローチ1)
このストレッチは上半身と下半身を同時に刺激します。
1. 足を開いてスタートポジション
両足を広げて、膝の上に手を置く。太ももと床が平行になるように腰を下ろしていきます。
2. 身体を右にひねり左肩と内ももを伸ばす
手を動かさないようにして、上体を右にひねります。顔は後方やや上をみるようにします。
3. 身体を左にひねり左肩と内ももを伸ばす
次に手を動かさないようにして、上体を左にひねります。

お腹の横のストレッチ(胸椎へのアプローチ2)
このストレッチは身体の横の筋肉を伸ばします。両サイドのバランスを取るようにしましょう。
1. 仰向けになり右足を上げて膝を曲げる
2. 左手で右足を持ち、右手は広げる
この時、右手は肩の高さで横に伸ばします。
3. 股関節をひねるように右足を左に倒す
この時、両肩は床につけたままにします。
4. 仰向けになり左足を上げて膝を曲げる
5. 右手で右足を持ち、左手は広げる
6. 股関節をひねるように左足を右に倒す

股関節回し
足を後ろ、横、前とゆっくり動かし、股関節とおしりの大殿筋を連動させます。股関節の可動域を高めます。
1. 手のひらをゆかにつけて四つんばいになる
この時、背筋はまっすぐにしましょう。
2. 左足を持ち上げ、後方に伸ばす
つま先をできるだけ遠くに置くようにのばします。
3. 左の股関節を開くようにする
左の股関節を開く。開こうとすると自然と左膝は曲がった形になります。
4. 膝で円を描くようにして左足を戻す
左膝が外側に回り込むようにして元に戻す。一連の動きをスムーズに円を描くように行います。左足に続いて右足でもやってみましょう。

肘のリハビリを機に、股関節や体幹の柔軟性にも目を向けることで、よりスムーズな動きと、再発しにくい身体づくりにつながります。ストレッチと軽い運動を継続しながら、本来の動きを取り戻せる体を少しずつ作っていきましょう。
記事監修・トレーナー

- 遠山 健太さん
- ワシントン州立大学教育学部小等学科卒業。順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科修了。株式会社ウィンゲート代表取締役。全日本モーグルチームのトレーナーとして、トップアスリートのトレーニング指導に携わってきた一方で、子どもの運動教室「ウィンゲートキッズ」のプログラムを開発するなど、子どもの体力向上についての研究も行っている。家族体力測定イベント「マイスポ」で第11回健康寿命をのばそう!アワード(生活習慣病予防分野)の企業部門において、スポーツ庁長官優秀賞を受賞。著書に、『るるぶKids こどもの運動能力がぐんぐん伸びる公園 東京版』(JTBパブリッシング)、『コツがつかめる! 体育ずかん』(ほるぷ出版)などがある。