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ゴルフで起きやすいケガ5選|肋骨・肘・手首・背中・ヒザの痛みと対処法

ゴルフは一見、穏やかで安全なスポーツと思われがちです。ところが実際には、プロ・アマチュアを問わず多くのプレーヤーが身体の痛みやケガを経験しています。研究によると、ゴルファーの半数以上が一度は何らかの痛みや障害を抱えた経験があり、見かけよりも身体への負担が大きい競技だといわれます。
スイングという動作は非常に複雑で、腰や手首、肘、肩、首などに繰り返しのストレスを与えます。特に腰部の障害は発生率が高く、男性に多い傾向が報告されています。
 

このように、穏やかに見えるスポーツであっても、フォームのわずかな乱れや筋力バランスの崩れによって慢性的な障害を招くことがあります。本記事では、ゴルフで起こりやすい代表的なケガを取り上げ、その原因や症状、予防・治療のポイントをわかりやすく解説します。長く健康的にプレーを続けるために、まずは自分の身体のサインに気づくことから始めましょう。

肋骨の痛み/肋骨疲労骨折(ゴルフ骨折)

ゴルフでは、スイングを何度も繰り返すうちに胸の横の筋肉が肋骨を引っ張り続け、骨に少しずつ負担がたまることがあります。この負担が積み重なると、肋骨に細かいヒビが入る「肋骨疲労骨折」を起こすことがあります。

 

特に、リード側(右打ちの人なら左胸、左打ちの人なら右胸)の肋骨に起こりやすいといわれています。練習量を急に増やしたり、フォームが崩れていたりすると、この部分にストレスが集中して発症しやすくなります。

 

疲労骨折とは|足・すね・大腿骨・骨盤から肋骨まで、体の広い範囲で起こるスポーツ傷害

症状

初期は肋骨のあたりが鈍く痛む程度ですが、次第にスイングや深呼吸のたびに痛みが強くなります。進行すると、咳や寝返りの動作でも痛みが出るようになり、胸の張りや腫れを伴う場合もあります。疲労骨折が進んだ状態では、骨が完全に折れていなくても痛みが鋭く持続し、安静時にもズキズキとした違和感が残るのが特徴です。

回復の目安

肋骨疲労骨折は、通常4週間ほどで自然に回復しますが、痛みを我慢してプレーを続けた場合は治癒が遅れることがあります。痛みが完全に引いてからも、1〜2週間は軽い練習から段階的に再開することが望ましく、焦ってスイングを再開すると再発の原因になります。

対処法|痛みが出たときの対応

痛みが強い場合は無理をせず、プレーを中止して安静にしましょう。
冷却で炎症を抑え、呼吸時にも痛みが続くようなら整形外科で検査を受けることが大切です。

予防法

練習量を段階的に増やし、体をねじる動作に十分慣らしていくことが大切です。
胸や脇の筋肉をストレッチで柔らかくし、フォームを安定させることで肋骨への負担を減らせます

肘の痛み|ゴルフ肘・テニス肘

ゴルフのスイング動作では、腕や手首を繰り返し使うため、肘まわりの腱に炎症が起こることがあります。

 

特に、肘の内側にある腱に負担がかかると「ゴルフ肘(内側上顆炎)」、外側に炎症が生じると「テニス肘(外側上顆炎)」と呼ばれます。

 

ゴルフ肘は、クラブを強く握りすぎたり、打ち込み動作で手首に力を入れすぎたりすることが原因です。 主な症状は、肘の内側の痛みやこわばり、前腕の張り、手首や握力の弱まりなどです。 中年層のゴルファーに多くみられ、スイングフォームや練習量が関係していると考えられます。

 

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)|テニスに限らず他のスポーツでも起こる肘の外側の痛み
ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)とは?|腕の内側の痛みをやわらげる原因・治療・リハビリ法

対処法|痛みが出たときの対応

肘の内側や外側に痛みが出たときは、まずプレーを中止して安静にすることが基本です。
発症初期には冷却(アイシング)を行い、炎症や腫れを抑えます。強い痛みが続く場合や、握る・持ち上げる動作で鋭い痛みがある場合は、整形外科を受診して腱や靭帯の損傷の程度を確認することが大切です。

予防法

クラブを強く握りすぎず、スイング時に腕全体で力を分散させるよう意識しましょう。
前腕のストレッチや軽い筋トレで柔軟性を保つことが効果的です。
肘に張りや痛みを覚えたときは、その日の練習を控え、フォームを見直すことが再発防止につながります。

 

ゴルフ肘・テニス肘をくり返さない|痛みが引いた後に取り入れたいセルフケア

手首のネンザ(捻挫)

「手首のネンザ(捻挫)」は、ゴルフで最も起こりやすいケガの一つです。スイング中にクラブが地面や硬い物(石や根など)に当たることで手首に強い衝撃が加わり、靭帯が伸びたり傷ついたりします。また、疲労がたまった状態でスイングを繰り返すことでも発症しやすくなります。

 

症状は、手首の痛み、腫れ、内出血、押したときの圧痛、動かしにくさなどです。痛みを我慢してプレーを続けると、腱鞘炎やゴルファーズ・リストに発展することもあります。

対処法|痛みが出たときの対応

スイング中や後に手首に痛みや腫れが出た場合は、まず安静にして動かさないようにします。患部を冷却(アイシング)し、腫れや炎症を抑えましょう。腫れが強いときや、内出血・変形・押したときの強い痛みがある場合は、整形外科でX線やMRI検査を受けて骨折や靭帯損傷の有無を確認します。軽度のネンザであっても無理をしてプレーを続けると、腱鞘炎や慢性の痛みに移行するおそれがあります。

予防法

スイングフォームを安定させ、地面への打ち込みを避けるようにしましょう。
リストサポーターを活用して手首を守り、疲労がたまっている日は無理をせず調整を。
同じケガを繰り返す場合は、クラブの長さや角度を見直すことも効果的です。

手首の痛み(腱鞘炎)|ゴルファーズ・リスト

ゴルフで起こる手首のケガの中でも多いのが「手首の腱鞘炎」です。手首や前腕の腱が炎症を起こし、クラブを握る動作で痛みが出ます。主な原因は手首の使いすぎ(オーバーユース)で、同じ動きを繰り返すスイングや不安定なフォームが影響します。

 

症状としては、手首や前腕のだるさ、腫れ、動かしたときの痛み、動きの硬さなどが挙げられます。
この状態を放置すると、手根管症候群に進行することがあります。

 
腱鞘炎・ドケルバン病|手首の親指側の痛みを感じたら

対処法|痛みが出たときの対応

手首の腱鞘炎は、手首のネンザと同様にまず安静を保ち、患部を冷却して炎症を抑えることが大切です。
痛みや腫れが続く場合、あるいは動かすだけで強い痛みが出る場合は、整形外科で状態を確認しましょう。

予防法

スイング時に手首だけで打ち込まず、体全体の動きでクラブを振るよう心がけましょう。
グリップを柔らかく持ち、手首への衝撃をやわらげることも大切です。
手首にいつもと違う痛みが出たら、いったん練習を中止し、十分に休ませてください。

背中や腰の痛み

ゴルフで最も多くみられるケガが、腰や背中の痛みと言われています。この障害の多くは、スイングという反復動作に由来します。同じ動きを繰り返すうちに、筋肉や関節、椎間板へ微細なストレスが蓄積し、時間の経過とともに炎症やネンザ、さらにはより深刻な障害へと進行することがあります。

主な病態は次の3つがあげられます。
 
椎間板ヘルニア:椎間板が突出して神経を刺激し、腰痛のほか、お尻や脚にしびれを感じます。前屈姿勢で痛みが強くなります。
腰椎椎間板ヘルニアとは|症状と予防 脚のしびれを伴ったら要注意
 
仙腸関節炎:骨盤の関節がねじれて炎症を起こし、腰の片側や骨盤の奥に痛みが出ます。立ち上がりや長時間の立位で悪化します。
仙腸関節炎(仙腸関節障害)|腰やお尻など骨盤周辺の痛み
 
椎間関節症:背骨の関節に炎症が起こり、背中を反らすと痛むのが特徴です。動作が硬くなり、慢性化すると可動域が狭まります。

対処法|痛みが出たときの対応

背中や腰に痛みが出た場合は、まず無理をせずプレーを控え、姿勢を安定させて安静を保ちましょう。
ゴルフで起こる腰背部障害には、仙腸関節炎・椎間板ヘルニア・椎間関節症などがあり、それぞれ原因や治療法が異なります。自己判断でストレッチやマッサージを続けると悪化することもあるため、症状が続く場合は早めに整形外科を受診して正確な診断を受けることが大切です。

予防法

股関節や胸椎の柔軟性を保ち、体幹の筋肉をバランスよく鍛えることが大切です。スイング前のストレッチやフォームの確認を習慣にし、痛みや違和感があった場合には早めに休みましょう。
 
腰にやさしい身体をつくる|競技者のための腰痛予防ストレッチ

ヒザや足の痛み

ゴルフで起こるヒザのケガは、プロ・アマチュアを問わず比較的多く見られます。 スイング動作では体重を左右に移動させながらヒザをねじるため、関節や周囲の組織に負担がかかります。繰り返されるこの動きが、炎症やネンザ、軟部組織の損傷につながることがあります。

ヒザの痛みにはいくつかのタイプがあり、主な原因として次のようなものが挙げられます。
 

  • ネンザ:スイング中にヒザが本来の可動範囲を超えてねじれることで発生します。痛みや腫れ、動きの制限、歩行時の力の入りにくさが特徴です。
  • オーバーユースによる痛み:練習量が多い状態でフォームや姿勢が崩れると、ヒザへのストレスが増します。ヒザのだるさや鈍い痛みが続き、休養をとると一時的に軽くなるのが特徴です。
  • ヒザの軟部組織損傷:ヒザの腱・靭帯・軟骨といったやわらかい組織が、スイング時の衝撃や過度な回旋で傷つくことがあります。クラブを振るたびに強い力がヒザに加わるため、フォームの乱れがあると発症しやすくなります。

対処法|痛みが出たときの対応

ラウンド中や練習後にヒザの内側や外側が痛む場合は、まずその日のプレーを切り上げる勇気を持ちましょう。
無理を続けると、軽い炎症が靭帯や半月板の損傷へ進むことがあります。帰宅後は患部を冷やし、脚を心臓より少し高くして休むと、腫れや熱感を抑えやすくなります。数日経っても違和感や張りが取れないときは、整形外科で状態を確認し、必要に応じてリハビリを受けることをおすすめします。ヒザはゴルフの安定したスイングを支える重要な関節です。早めにケアすれば、長期の休養を防ぎ、スムーズに復帰できます。

予防法

下半身の筋力をバランスよく鍛え、股関節や太ももの柔軟性を保つことがヒザの安定に役立ちます。
スイングでは、体重移動のタイミングと姿勢を整えることが重要です。ヒザに張りや重さを感じたら、いったんクラブを置いて体を休めることも大切です。早めのケアが、長くプレーを続けるための近道になります。

ケガを起こさないために

ゴルフで起こるケガの多くは、フォームや筋肉の使い方の癖、そして体の小さな疲労の積み重ねから生じます。
痛みを感じたときは自己判断せず、整形外科やスポーツトレーナーなど専門家の診断を受けることが回復への第一歩です。早期に原因を突き止めれば、長引く不調を防ぐことができます。
 
ケガを予防するには、日常の意識づけが何より大切です。
プレー前のウォームアップで筋肉を温めることはもちろん、体幹や下半身の筋力を維持し、柔軟性を保つことで、スイング時の負担を減らせます。また、スイングフォームや姿勢を定期的に見直し、クラブの扱い方やバッグの持ち上げ方にも注意を払いましょう。さらに、体への負担を減らすサポートとして、肘や手首を安定させるサポーターや、足元のバランスを整えるスポーツ用インソールを活用するのも効果的です。これらは関節や筋肉のブレを抑え、長時間のプレーでも疲労を軽減してくれます。
 
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そして何より、自分の体の変化に敏感でいることが大切です。
「少し変だな」と思った時点でプレーを控え、早めにケアを行えば、深刻なケガを防ぐことができます。
体を整えながらプレーを重ねていくことこそ、長くゴルフを楽しむための最善の方法です。

参考文献(Vancouverスタイル)

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記事監修・整形外科医

毛利 晃大先生
毛利 晃大先生
順天堂大学医学部卒業、日本救急医学会専門医、日本整形外科学会会員
日本医師会認定スポーツ医、日本バスケットボール協会スポーツ医学委員会所属ドクター