2026.05.22
股関節の柔軟性を高めるストレッチ5選|可動域とパフォーマンスを引き出す基本アプローチ
股関節は、骨盤と大腿骨をつなぐ球関節(ボール&ソケット型の関節)であり、屈曲・伸展・外転・内転・内旋・外旋という多方向への動きを担う関節です。歩行や走行、跳躍、サイドステップ、深いしゃがみ込みなど、下半身を起点とする動作の多くで力の伝達と方向転換を担うため、ここの可動域と動きの質は、競技動作のパフォーマンスに直結します。そこで取り入れたいのが、股関節へ異なる方向と肢位からアプローチできるストレッチです。座位で内旋を引き出す方法、四つ這いで全可動域を巡らせる方法、ランジで屈曲と伸展を同時に深める方法などを組み合わせることで、股関節を多方向から段階的に動かしやすくなります。ここでは、股関節の柔軟性を高めるためのストレッチを5種目ご紹介します。本記事で紹介する5種目は動きを伴う動的ストレッチのため、運動前のウォーミングアップとして取り入れるのが特におすすめです。
1. 90-90ヒップスイッチ
股関節の内旋と外旋を、左右同時かつダイナミックに動かしていくストレッチです。股関節は球関節という構造上、回旋を含めた多方向の動きが可能ですが、内旋方向の動きは現代人で衰えやすい傾向があり、ここを引き出しておくことが歩行や走行時のパフォーマンスにつながります。
1. 両足を開き、ヒザを90度に曲げて準備姿勢をとる
2. 床に座り、右脚を前に、左脚を横に出す(90-90ポジション)
両方のヒザを90度に曲げる。右脚(前)はスネがカラダの正面と並行、左脚(横)は太ももがカラダの正面と並行になるようにします。
3. ヒザを左右交互に倒す
左右のヒザを同じ方向に倒し、両方のヒザが床につくように動かします。
4. 上半身を倒して深くストレッチする
ヒザを倒した状態で、背すじを真っ直ぐに伸ばしたまま、前脚の太ももに向かってゆっくりと上半身を倒していきます。
5. 左右順番に切り替え、同様に行う
左右で1回とし、トータル8回を1セットとします。これを2セット程度実施するとよいでしょう。
2. ヒップ・カーズ
股関節の球関節としての特徴を活かし、可動域をフルに使いながら自分の筋力で360度コントロールする能力を高める種目です。ストレッチでありながらトレーニング要素も併せ持つため、ウォーミングアップや運動後の補強としても採用できます。四つん這いから始め、慣れてきたら立位で壁に手を置きながら、最終的には片足立ちでできるようになるとよいでしょう。
1. セットアップ:四つ這いの姿勢になる
肩の真下に手、股関節の真下にヒザを置く。背中を平らにし、腹筋に力を入れて骨盤を固定します。動作中、背中を反らせたり、骨盤を左右に傾けたりしないこと。
2. 屈曲(前への引き込み)
右ヒザを曲げたまま、胸の方へ引き寄せる。限界まで引き寄せ、股関節の前側を「閉じ切る」感覚を持ちます。
3. 外転(横への開放)
引き寄せたヒザを、真横に持ち上げる(犬のマーキングのようなポーズ)。反対側の肘が曲がる、骨盤が一緒に浮かない、などの範囲で行います。
4. 内旋(ひねりながら回す)
ヒザの高さは変えずに、足首(かかと)だけを天井に向けるように股関節を内側にひねる。股関節の奥が詰まるような感覚があれば正解です。ここが一番重要なポイントになります。
5.6. 伸展
そのまま円を描くように、ヒザを後ろへ持っていき、最初の四つ這いに戻る。
逆回転(後ろ→横→前)も同様に行います。左右で1回を5回、2セット程度行うとよいでしょう。
※鋭い痛みや不快な詰まり感がある場合は無理にひねらず、動かせる範囲で行ってください。
3. スパイダーマンランジwithリーチ
歩きながらフォワードランジを行ったあとに、外側の手を大きく回して胸椎の回旋を強調するストレッチです。股関節の屈曲・伸展と、胸椎の回旋を一連の動きの中でつなげていくのが特徴で、走動作や切り返し動作に必要な可動域を一度に引き出していきます。
1. セットアップ
スタートは腕立て伏せの姿勢からでもかまいません。
2. 右足を、右手のすぐ外側に大きく一歩踏み出しながら腰とヒザを落としていく
3. ヒザを床に近づける(股関節の沈み込み)
右の肘を、右足の土踏まずあたりの床に向かって近づけていく。右の股関節が深く曲がり(屈曲)、左の股関節の前側が伸びる(伸展)のを感じるようにします。後ろに残した左足のヒザは浮かせておくと強度が上がります(きつい場合は床についてもOKです)。
4. リーチ&ローテーション(胸椎の回旋)
左手を床から離し、指先が天井を指すように大きくカラダを捻りながら引き上げる。目線は上げた指先を追いかけます。骨盤はできるだけ水平に保ったまま、胸から上を回すイメージで行うと、股関節の詰まりを防ぎつつ可動域を広げることができます。
5.6.7. 反対側も同様に行い、歩いて前に進みながら繰り返す
4. アドダクター・ロックス
股関節の内転筋と背中の柔軟性に同時にアプローチするストレッチです。内転筋が硬いと骨盤がロックされ、サイドステップなどの横方向の動きのキレに影響しやすくなります。これを解消しつつ、上半身の回旋動作も組み合わせていきます。
1. セットアップ
四つ這いの姿勢になる。背すじは丸めず、まっすぐに保ちます。
2. ロッキング(股関節の引き込み)
右脚を真横に伸ばしたあとに、右足の裏全体を床につけ、つま先は正面(手と同じ方向)を向くようにします。そのまま、お尻をゆっくりと後ろ(左のかかと方向)へ引いていきます。右脚の内もも(内転筋)がよく伸びるのを感じてください。限界まで引いたら、元の位置に戻ります。
※この状態でお尻をゆっくりと後ろ(左のかかと方向)へ引いていき、元に戻す動きを数回繰り返す。
3. 回旋(ティー・スパイン・ローテーション)
お尻を少し後ろに引いた(内ももに伸びを感じている)状態でキープし、右手を床から離して後頭部に添えます。右の肘を天井に向かって大きく引き上げ、カラダを右側に捻ります。目線は肘を追いかけます。軸にしている左手でしっかり床を押し、骨盤が右に流れないように耐えます。
4. リセット
肘をゆっくり元の位置(床方向)に戻し、これを数回繰り返したら、反対側も同様に行います。
片側ずつ8回を2セット程度行うとよいでしょう。
5. コサックスクワット
股関節の柔軟性だけでなく、アスリートに必要な最大可動域での筋力を同時に鍛えられる非常に優れた種目です。一般的なサイドランジよりも深く沈み込み、関節をダイナミックに動かすのが特徴です。ウォーミングアップは最終的に立位の種目で締めると主運動に入りやすいので最終種目として導入することをおすすめします。
1. 足を肩幅の2倍以上に大きく開き、つま先は少し外側(30〜45度程度)に向ける
背すじを伸ばし、両手は胸の前で組むか、バランスを取るために前に伸ばしておく。
2. 体重を右足に乗せながら、お尻を真下ではなく、「斜め後ろ」に引くようにゆっくり深くしゃがみ込む
右足のかかとは基本的に浮かせないようにしますが、足首が硬くてかかとが浮いてしまう場合は、かかとが浮かない範囲の深さでしゃがむようにしてください慣れてきたら、右へしゃがむ際、左脚のつま先を天井に向けるようにクルッと回転させ、かかとで接地すると良いでしょう。内転筋だけでなくハムストリングスの内側まで深くストレッチされます。
3. 右足の足裏全体で地面を強く押し、元のセンターポジションに戻る
4. 同様に、左側へも行う
左右で1回を10回、2セット行いましょう。
記事監修・トレーナー

- 遠山 健太さん
- ワシントン州立大学教育学部卒業。順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科博士課程修了。株式会社ウィンゲート代表取締役、博士(スポーツ健康科学)。全日本モーグルチームのトレーナーとして、トップアスリートのトレーニング指導に携わってきた一方で、子どもの運動教室「ウィンゲートキッズ」のプログラムを開発するなど、子どもの体力向上についての研究も行っている。家族体力測定イベント「マイスポ」で第11回健康寿命をのばそう!アワード(生活習慣病予防分野)の企業部門において、スポーツ庁長官優秀賞を受賞。著書に、『るるぶKids こどもの運動能力がぐんぐん伸びる公園 東京版』(JTBパブリッシング)、『コツがつかめる! 体育ずかん』(ほるぷ出版)などがある。