2026.08.31
三角骨障害とは|つま先を伸ばすと足首の後ろが痛む人へ
つま先を強く伸ばしたときや、ジャンプの踏み切りのとき、ボールを蹴ったときなどに、足首の後ろが痛む。ネンザをした覚えはないのに、痛みが何か月も続いている。そうした痛みの背景に、足首の奥にある小さな骨「三角骨(さんかくこつ)」が関わっていることがあります。三角骨があれば必ず痛みが生じるわけではありませんが、足首を伸ばす動作を何度も繰り返すなど負荷が加わると、痛みが生じる場合があります。
三角骨障害はどんな痛みか
三角骨障害とは、足首を強く伸ばす動き(底屈:ていくつ)によって、足首の後ろの奥に痛みが出る状態です。足関節後方インピンジメント症候群と呼ばれる状態のうち、三角骨が関わるものを指します。
三角骨障害の痛みの特徴
三角骨障害による痛みは、アキレス腱の奥のほうに感じる深い痛みです。ずっと続く痛み、鋭い痛み、鈍い痛み、広がるような痛みと、感じ方はさまざまです。どこが痛いのかを正確に指し示しにくいことも知られています。
三角骨障害で痛みが強くなる動作
痛みが強くなるのは、つま先を伸ばす動きを繰り返したときです。坂道を下るとき、階段を下りるとき、かかとの高い靴を履いたときにも痛みが出ることがあります。サッカー選手を対象とした報告では、ボールを蹴るために足首を強く伸ばしたときの痛みが、共通した訴えとして挙げられています。
三角骨障害の症状はどのように始まるか
始まり方は二通りあります。足首を強く底屈させられたあとに始まる場合と、繰り返しの負荷でじわじわ始まる場合です。前者では、受傷の直後ではなく、3〜4週間ほどたってから痛みや腫れとして現れることがあります。
三角骨障害と似た症状
足首の後ろの痛みを起こすものは、三角骨障害だけではありません。アキレス腱の障害、腓骨筋腱(ひこつきんけん)の障害、後脛骨筋腱(こうけいこつきんけん)の障害など、症状の似たものがいくつもあります。痛み方の特徴だけで自分で見分けることはできません。
三角骨があっても、痛むとは限らない
足首を強く伸ばすと、すねの骨(脛骨:けいこつ)の後ろ側と、かかとの骨(踵骨:しょうこつ)の間で、後方の組織が挟み込まれます。三角骨は、この挟み込みに関わることがある骨です。
三角骨はどのようにできるのか
三角骨は、子どもの頃に現れる骨のもとが、距骨(きょこつ)という足首の骨の後ろ側にそのままくっつかずに残ったものをいいます。骨のもとが現れるのは8〜11歳ごろとされ、くっついた場合は突起が長く伸びた形になります。
三角骨があっても症状がない人は多い
三角骨は決して珍しいものではありません。複数の研究をまとめた集計では、のべ36,612足のうち約9%に三角骨が確認されました。プロバレエダンサー31人を対象とした研究では、足首に症状がない状態でも三角骨が確認されました。左右計62足をMRIで調べたところ、三角骨は5足にみられました。つまり、三角骨があっても、痛みを感じないまま踊り続けている人がいるということです。
バレエダンサーやサッカー選手など82人を対象に、MRIの所見と症状の関係を調べた研究もあります。この研究では、画像の所見と、足首の後ろの痛みや、底屈で痛みを誘発する検査の結果との間に、関連はみられませんでした。
痛みの原因は三角骨だけではない
痛みの原因になるものも、三角骨だけではありません。足関節後方インピンジメント症候群の手術を受けた111足を調べた研究では、三角骨だけでなく、足の親指を曲げる腱をはじめとする周囲の腱や軟らかい組織が関わっている例も確認されました。三角骨があるかどうかだけで、痛みの原因が決まるわけではないということです。
三角骨障害が起こりやすいスポーツや動作
三角骨障害が起こりやすいのは、足首を強く伸ばした姿勢を繰り返す競技です。バレエダンサーとサッカー選手は、競技の性質上こうした動きを繰り返すため、起こりやすいと考えられています。
バレエでの典型的な発症メカニズム
バレエでは、つま先立ち(アン・ポワント)と半つま先(ドゥミ・ポワント)が、足首を最大限に伸ばした状態に体重をかける姿勢にあたります。この姿勢は足首の後ろに過大な力を生み、挟み込みや痛み、動きの制限につながることがあります。三角骨と、長く伸びた距骨の突起は、バレエダンサーの足首の後ろの痛みに関連する形として古くから記載されてきました。このほか、下り坂を走るランナーや、クリケットの速球投手でも報告されています。
足首の不安定さも関係する
足首のジン帯の状態が関わることも報告されています。三角骨障害のあるプロ選手80人を調べた研究では、手術を受けた選手に慢性的な外側ジン帯損傷が多くみられ、慢性的なジン帯損傷と手術との間に関連が示されました。研究チームは、三角骨障害のある選手では、足首の不安定さも併せて評価する必要があると述べています。
痛みが出たあとの診断と治療
三角骨障害の診断方法
診断は、問診と診察が中心になります。診察では、足首を強く底屈させて痛みが再現されるかどうかを医師が確認します。ただし、この確認がどれくらい正確なのかを調べた研究はまだないと言われています。レントゲンやMRIで、三角骨や長く伸びた突起の有無を確認しますが、写っていることと痛みがあることは分けて考える必要があります。
治療
治療は保存療法から始まります。安静と、痛みが出る動作を控えることが柱です。アイシングや消炎鎮痛薬が用いられ、症状が強い場合には固定を行うことがあります。サッカー選手を対象とした報告では、底屈を制限する装具を使いながら活動の内容を調整し、競技に合わせたリハビリを組み合わせる方法がとられていました。理学療法では、足首の安定性と、からだの位置を感じ取る感覚を整えることが中心になります。
ただし、保存療法がどのくらい効くのかは、まだはっきりしていません。これまでの報告は少数の患者の経過をまとめたものが中心で、あらかじめ計画して経過を追う研究が十分に行われていないためです。保存療法を続けても競技時の痛みが残る場合には、手術が検討されることがあります。手術を検討する時期は、症状や競技状況によって異なります。
リハビリテーション
リハビリの進め方については、次のような報告があります。男性サッカー選手15人を対象とした小規模な研究では、8週間の運動プログラムが行われました。片脚立ちなどの安定性を高める運動から始め、ランジやスクワット、跳ぶ動作、走る動作へと段階的に進めています。8週間後には、痛みや足首の可動域、足と足首の機能評価に変化がみられました。ただし、対照群がなく、プログラムを完了できなかった選手もいるため、この結果だけで効果を判断することはできません。
競技復帰の目安(保存療法のエビデンス)
男性のプロサッカー選手26人を対象とした報告では、手術を受けなかった選手が練習へ戻るまでの平均は約36日、手術を受けた選手では手術後約50日でした。ただし、対象が少なく、競技や治療内容によって期間は変わります。
治療やリハビリで確認される足首の機能
小規模な研究では、三角骨障害のある選手に、片脚かかと上げの回数低下や足首の不安定感がみられました。こうした機能面も、医師や理学療法士が状態を評価する際の要素になります。
痛みが引いたかどうかだけでなく、足首の機能がどこまで戻っているかも含めて、担当の医師や理学療法士と相談しながら進めてください。
まとめ|三角骨があるかどうかより、痛みが続くかどうか
三角骨は決して珍しいものではなく、症状がない人にもみられます。画像で見つかったというだけで、痛みの原因とは判断できません。周囲の腱や軟らかい組織など、他の要素が関わっていることもあります。
また、足首の後ろの痛みは三角骨障害だけではありません。似た症状がいくつもあるため、痛み方だけで自分で見分けることはできません。
三角骨障害と診断された場合は、まず保存療法から始まります。足首を強く伸ばす動きを避けながら進めるのが基本です。また、手術を受けた選手に慢性的な外側ジン帯損傷が多くみられたという報告もあるため、足首の不安定さも併せて評価する必要があります。
足首を伸ばしたときの痛みが続く場合は、三角骨の有無だけで自己判断せず、整形外科へ相談しましょう。
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記事監修・整形外科医

- 毛利 晃大先生
- 順天堂大学医学部卒業、日本整形外科学会会員 日本医師会認定スポーツ医、日本バスケットボール協会スポーツ医学委員会所属ドクター