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アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎とは|原因・症状・対処法と慢性化予防

アキレス腱は人体の腱の中で、最も強い腱といわれているほど強大です。アキレス腱を切るほどのケガは、かなりの大きな力がかかりますが、小さな負荷の繰り返しであるランニングや日常生活でも痛みを伴う炎症が起きる場合があります。アキレス腱炎やアキレス腱周囲炎と呼ばれるもので、早めの対処を怠るととても長引いてしまう厄介なケガです。今回は、アキレス腱炎、アキレス腱周囲炎の原因や予防、コンディショニングについて解説します。

アキレス腱の仕組み

アキレス腱は腓腹筋とヒラメ筋があつまって束になり、かかとについている腱です。腓腹筋とヒラメ筋は、アキレス腱を介してかかとを持ち上げ、足を動かします。スポーツでは、ダッシュやジャンプをするときの「力」を地面に伝える重要な役割を担っているのです。 また、腱のまわりはパラテノン(腱傍組織)と呼ばれる組織が覆い、腱を守り、血液を供給するなどの役割をはたしています。

アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎とは|原因と特徴

アキレス腱炎はアキレス腱自体の炎症です。アキレス腱周囲炎はアキレス腱を包むパラテノン(腱傍組織)の炎症です。この2つは症状が似ており区別が難しく、併発することもあります。ダッシュやジャンプの繰り返しによって、アキレス腱付近への負担が増えることが主な原因とされています。また運動時のフォームやシューズとのフィット感などが原因になることもあります。

 

なお、前述のとおり腓腹筋、ヒラメ筋は、アキレス腱を介してかかとと連動していることから、足部アライメントのバランスが崩れることも原因の一つと考えられています。

 

アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎の症状と痛みの特徴

アキレス腱付近が炎症を起こすことで、痛みや腫れが起こります。痛みは運動したあとや翌日に出ることもあります。また朝は痛みが改善した印象を受けることがあります。早期に適切な対処や治療を行わないと回復するまでに長い時間がかかります。また時間が経過しすぎると腱の弾力性が失われます。

 

なお、アキレス腱炎では、痛みが腱そのものに集中しやすく、押すと強く痛むのが特徴です。 一方、アキレス腱周囲炎では、痛みが腱のまわり全体に広がりやすく、触れると周囲にも痛みがあり、きしむような違和感を感じることがあります。

アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎になりやすい人の特徴とリスク要因

アキレス腱炎(アキレス腱障害)は、スポーツ愛好家から一般の方まで幅広く見られる代表的な足のトラブルです。スポーツ以外では、特に60歳以上の男性に多く、また生活習慣や体の特徴によってリスクが高まることが分かっています。

スポーツや日常生活に関わるリスク要因

  • サッカーやバスケットボールなど、急なストップや方向転換を繰り返すスポーツ
  • ランニングやダンスの習慣がある人
  • 足や足首に負担のかかる仕事(例:肉体労働)
  • 普段あまり運動をせず、休日だけ激しくスポーツをする週末アスリート

体の特徴や筋力に関わるリスク要因

  • ふくらはぎの筋肉が硬い、または弱い
  • 扁平足(土踏まずが低い)や、逆に土踏まずが高すぎる足(ハイアーチ)
  • 歩行時に足首が内側に過剰に倒れ込む「オーバープロネーション」
  • かかとの骨に突起(骨棘)があり腱を刺激してしまう場合
  • 足首の関節がかたくなり、動きが悪い状態の人
  • お尻の筋肉や足の奥にある小さな筋肉群が弱い人

薬や病気に関連するリスク要因

  • 糖尿病などの代謝性疾患の人
  • リウマチ性疾患の人
  • 一部の抗菌薬やステロイドを使用している人

運動習慣や靴に関わるリスク要因

  • 急にランニングの距離や強度を増やす
  • いつもと違う道や硬い地形で走る
  • 硬い地面や坂道でのランニング
  • ヒールの高さが合わない靴、ソールが硬すぎる靴、クッション性が不足している靴、すり減りが偏っている靴

アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎の診断

アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎は、症状が足首の捻挫などと似ているため、判断が難しい場合があります。専門医の診断を仰ぎましょう。診断では炎症のサインが見られることがあり、診察では医師が腱を押したり動かしたりして症状を確認します。また、より正確に診断し、治療方針を決めるために画像検査が使われます。ケガの程度を把握するのに役立ち、主に以下のような検査があります。

 

  • MRI:腱や周囲の組織の細かい状態を詳しく確認できる。
  • 超音波検査(エコー):腱の動きを見ながら炎症や損傷を調べられる。
  • X線検査:骨の異常や腱に影響を与える骨棘などを確認できる。

アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎の治療

基本は手術をしない保存療法から

アキレス腱炎の治療は、多くの場合まず保存療法(手術をしない方法(保存療法)から始めます。痛みが改善するまでには数か月かかることもあり、すでに長く症状が続いている人ほど回復には時間が必要です。基本的にアキレス腱炎、アキレス腱周囲炎は早期に適切な対応を行えば、予後も良好に推移するといわれています。

保存療法の代表「RICE」

RICEとは、炎症や痛みを和らげるための基本的な処置です。

  • Rest(安静):腱に負担をかける運動を中止し、水泳など負担の少ない運動に切り替えます。
  • Ice(冷却):痛みがある部分を1日数回、20分ほど冷やします。
  • Compression(圧迫):包帯やテーピングで腱を軽く圧迫します。
  • Elevation(挙上):仰向けに寝て足を心臓より高く上げ、腫れを抑えます。

アキレス腱を守る工夫

  • 坂道やはしごなど、腱を強く伸ばす動作は避ける。
  • サポート力のある靴、アーチサポート機能のあるスポーツインソールやオーダーメイドインソールを使う。
  • 強い痛みがあるときはギプスなどを使うこともあります。

そのほかの保存療法

  • 消炎鎮痛薬:ただし長期使用は必ず医師に相談をしましょう。
  • 自宅でできるストレッチ:特にふくらはぎのストレッチが効果的です。
  • 理学療法(リハビリ):筋力強化、マッサージ、ストレッチ、正しい走り方の指導などがあります。
  • ショックウェーブ療法:強い音波で痛みを和らげ、回復を促します。

手術が検討されるのは?

保存療法を6か月以上続けても痛みが改善しない場合など、手術が検討される場合があります。手術の内容は、ケガの程度や年齢、生活スタイル、スポーツ活動の有無などを踏まえて検討されます。

アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎を放っておくとどうなる?

軽症の段階で適切に休ませずに使い続けると、アキレス腱の組織が少しずつ傷み、弱くなっていきます。さらに悪化すると、アキレス腱がかかとの骨からはがれたり、部分的に切れたり、完全に断裂(アキレス腱断裂)してしまうこともあります。断裂すると強い痛みが走り、歩行が困難になり、多くの場合は手術が必要です。

予防とリコンディショニング

痛みを感じたり、故障が発生したら、すぐに医師の診察を受けることをおすすめします。基本的にアキレス腱炎、アキレス腱周囲炎は早期に適切な対応を行えば、予後も良好に推移するといわれています。

 

予防としては運動前後にしっかりとふくらはぎのストレッチをしましょう。痛みを和らげ慢性化を防ぎます。

また、アキレス腱だけではありませんが、足の負担を軽減するためには、かかとのクッション性も考慮し、自分のレベルに合ったシューズを正しく選択することも重要です。さらに、足裏のアーチをサポートするインソールを利用することで、余分な動き(オーバープロネーションなど)を防ぎ、アキレス腱の負担を減らすことが期待できます。

まとめ

  • アキレス腱炎やアキレス腱周囲炎はダッシュやジャンプの繰り返しによるオーバーユースが主たる原因です。
  • アキレス腱周辺に痛みや腫れがあれば、すぐに医師の診断を受けましょう。早期に適切な対処や治療を行わないと回復するまでに長い時間がかかります。
  • 予防には運動前後のストレッチが重要です。シューズ選びを正しく行い、足裏のアーチをサポートするインソールも活用してみましょう。

参考文献

  • 『SPORTS MEDICINE LIBRARY』ZAMST
  • ZAMST公式Facebook
  • 『対策HANDBOOK 足首ネンザ アキレス腱炎など 足の痛み』ZAMST
  • 『INSOLE GUIDEBOOK』ZAMST
  • Medina Pabón MA, Naqvi U. Achilles Tendonitis. [Updated 2022 May 29].
  • 医療情報科学研究所 『病気がみえるvol.11 運動器・整形外科』メディックメディア

記事監修・整形外科医

毛利 晃大先生
毛利 晃大先生
順天堂大学医学部卒業、日本救急医学会専門医、日本整形外科学会会員 日本医師会認定スポーツ医、日本バスケットボール協会スポーツ医学委員会所属ドクター

足の痛みについてより深く学びたい方へ

各痛みに関するドクターによる症状解説、トレーナーによる対処法解説がアーカイブ化されています。
※インソールの使用によりこれらの症状に効果があるわけではありません。