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ZAMST Online

2024.05.01

スポーツと熱中症|スポーツドクターからのアドバイス② 予防編

スポーツ障害の中でも重症度が高いとされる熱中症について、サッカー日本代表チームのドクター経験を持つ加藤晴康先生に2回に渡って話をお聞きしています。今回は特に、スポーツのリアルな現場での実践についてアドバイスをいただきました。

 

※前編(スポーツと熱中症|スポーツドクターからのアドバイス① リスクの理解編)はこちら
※熱中症の詳しい説明についてはこちら(熱中症 とは|致死率の高いスポーツ障害)をご覧ください

発汗を促進するために

前編では人間の体は、暑い時には汗が蒸発する際に気化熱によって皮膚の表面から体温を効果的に下げるようにできているというお話がありました。発汗で失われる水分を補うための水分補給としては、どのような飲み物が推奨できますか?

汗は血液をもとにつくられます。ですから水分補給について考える時も、血液になるまでのスピードができるだけ速い飲み物が一番良いということになります。飲み物は食道から胃、腸に入って、血液の中に入っていくわけですが、そのプロセスの効率が良い飲み物として、経口補水液があります。経口補水液は実はかんたんに作ることができます。

 

※汗は汗腺で、血液や間質液を原料として作られます。血液と同様に電解質や有機物も含まれます。

経口補水液

もともと経口補水液 (ORS) は、点滴が用意しにくい発展途上国において、子どもたちの脱水症状をふせぐために、飲んで水分と電解質を素早く補給できるように開発されました。その成分は WHO(世界保健機関)からガイドラインが提示されています。


経口補水液の作り方

経口補水液 (ORS) は、薬局などで購入できますが、自宅でも用意することができます。これなら安価に家族全員やチームの分も用意できます。(砂糖とあるのは本来ブドウ糖ですが、入手のしやすさから代用しています)


用意するもの

水:1 リットル
砂糖:40 グラム(大さじ4と1/2程度)
塩:3 グラム(小さじ1/2 程度)

※但し、このままだと飲みにくいので、果汁を搾るなどフレーバーを加えていただくと良いでしょう。

深部体温を上げないために

湿度が高いと汗をかいても蒸発しないという話がありましたが、それを予防するための指標はありますか?

それが国際的な規格となっている暑さ指数(WBGT)です。WBGTが28℃を超えると汗の蒸発がガクッと減ります。31℃を超えるとほとんど蒸発しなくなります。そうなると水分補給をしても体温が下がらなくなってしまいます。そのように湿度を考慮して計測されていると理解してWBGTを見ると対策をとりやすくなります。

 

※WBGTは気温・湿度・輻射熱・気流の4つの要素を組み合わせて算出される。輻射熱は地面からの照り返し等を含みます。
※WBGTは環境省熱中症予防情報サイトhttps://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_data.phpで確認することができます。
また、現在はWBGT測定器は容易に購入することができます。

暑さ指数(WBGT) 気温(参考) 熱中症予防運動指針
31以上 35℃以上 運動は原則中止 特別の場合以外は運動を中止する。
特に子どもの場合には中止すべき。
28~31 31~35 厳重警戒(激しい運動は中止) 熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。10~20分おきに休憩をとり水分・塩分の補給を行う。暑さに弱い人は運動を軽減または中止。
25~28 28~31 警戒(積極的に休憩) 熱中症の危険が増すので、積極的に休憩をとり適宜、水分・塩分を補給する。激しい運動では、30分おきくらいに休憩をとる。
21~25 24~28 注意(積極的に水分補給) 熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。熱中症の兆候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する。
21未満 24℃未満 ほぼ安全(適宜水分補給) 通常は熱中症の危険は小さいが、適宜水分・塩分の補給は必要である。市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意。

※暑さに弱い人:体力の低い人、肥満の人や暑さに慣れていない人など

(公財)日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(2019)より一部改編

湿度が高い時、つまりWBGTが高い時には水分補給以外の対策も重要になってくると思いますが、例えばどういうことがありますか?

水分補給

まず前提条件としてこまめな水分補給は大事です。体温を下げるこということは、血液の温度を下げるのがポイントになります。脱水になると毛細血管の血流量が減るので、この状態に陥ると外から表面を冷やしても効率が悪くなります。ですから脱水は絶対避けなければなりません。

気化熱

次にWBGTが高くなってくると汗が蒸発しにくい環境になるので、水分補給だけでは追いつかなくなります。まず休憩をとることに加え、気化熱をいかに促すかというのが大事になってきます。風に当たると汗は蒸発しますから、風を当ててあげるというのが方法の一つにあげられます。ハーフタイム等で選手に対しサポートスタッフが大きいうちわであおいであげるのは、汗の蒸発を促す効果があります。

皮膚の表面を冷やす

もう一つは単純に皮膚の表面を冷やしてあげることで、皮下の血液の温度をさげるという方法です。単純な方法としては水を浴びる等があります。

皮膚の表面を冷やすという点では、首を冷やすネックリングのようなタイプ、冷却ベストやポンチョのように羽織るタイプ、日傘のようなタイプが市販されていますが効果的でしょうか?

効率的な冷やし方としては、細くて全身をめぐる毛細血管を広い面で冷やすという方法です。体温低下という面では、太い動脈を冷やそうとする手法よりも、全身を広く冷やすほうが効率的であるという研究結果も報告されています。

 

ザムストのCOOL SHADER(冷感ポンチョ)WIDE SUNSHADER(日傘)アイス&チャージベスト(冷却ベスト)もそういう面で期待できそうですね。ただし、プレー中は利用できないのであくまでも休憩中や練習前後の話になりますが、全身を広く冷やすという点で有効ではないかと思います。

 

一方でネックリングのようなタイプについてですが、首の太い血管は皮膚よりもかなり下にあり、脂肪に包まれています。尚かつかなり早いスピードで流れています。よって体温を冷やす方法としては効率が悪いという意見があります。ただし、このタイプは、涼しくなったと早く感じられるというメリットもあるかと思います。

WBGTが高い時には、水分補給、気化熱、皮膚の表面を冷やす工夫がポイントになることが理解できました。また冷却グッズの利用についても湿度や環境に応じて使いわけることも重要ですね。ありがとうございました。

ザムストの暑熱アイテム

参考文献

ドクター紹介

加藤 晴康先生

聖マリアンナ医科大学卒(整形外科入局)。聖マリアンナ医科大学スポーツ医学講座講師、立教大学スポーツウエルネス学部教授、日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

 

U-16サッカー日本代表帯同(1996年)
北京オリンピック・男子サッカー日本代表チームドクター(2008年)
男子サッカー日本代表チームドクター(2018年~)