後脛骨筋腱障害とは|内くるぶしの後ろ・下が痛む原因・症状と治療
内くるぶしの後ろから下にかけて痛む、押すと痛い、少し腫れている。そのどれかに心当たりがあるなら、内くるぶしの後ろを回って土踏まずにつながる「後脛骨筋腱(こうけいこつきんけん)」が関わっているかもしれません。ただ、内くるぶしのまわりには似た痛みを起こす障害がいくつかあり、痛む場所だけでは見分けがつきにくいところです。
この記事では、後脛骨筋腱のつくりとそこに起こる問題、症状、医療機関で行われる診察と治療、競技復帰に向けた考え方をご紹介します。
後脛骨筋腱とは|内くるぶしの後ろで向きを変える腱
後脛骨筋(こうけいこつきん)は、ふくらはぎのいちばん深いところにある筋肉です。この筋肉はすねの骨の裏側などから始まり、下に向かう途中で腱に変わって、内くるぶしの後ろを通ります。そこから足の裏側へ回り込み、主に土踏まずの頂点にある舟状骨(しゅうじょうこつ)に付きます。ほかにも、足の裏の複数の骨に広く付いています。
後脛骨筋腱は、足の裏を内側へ向けたり、つま先を下げたりするときに働きます。足の裏に広く付いていることで、土踏まずを内側から支えています。歩くときには、着地したときに足が内側へつぶれ込みすぎないよう支え、蹴り出しのときには足を固めて、力を伝えやすくしています。
内くるぶしのところで、腱は縦向きから横向きへ急に向きを変えます。このあたりには、腱に入り込む血管の少ない区間があることが、解剖の研究で報告されています。そのため、こうした血流の少ない区間は、腱が傷みやすいこととの関連が考えられています。
後脛骨筋腱に起こる問題
スポーツでは、バスケットボールやテニス、サッカーのような足への衝撃が大きい競技での使いすぎや、転倒などのけがをきっかけに、腱が炎症を起こすことがあります。炎症をくり返すと、腱の傷みが進むことがあるとされています。
中高年に多い「後脛骨筋腱機能不全」
後脛骨筋腱の問題は、スポーツによる腱の炎症だけではありません。中高年では、腱が土踏まずを支えきれなくなり、足の形が少しずつ変わっていくことがあります。これを「後脛骨筋腱機能不全(こうけいこつきんけんきのうふぜん)」といいます。立ったときに土踏まずが下がり、後ろから見るとかかとが外側へ傾いた形(後足部外反)になっていきます。
発症には、体重の重さ、もともとの扁平足、糖尿病、過去のけがなど、いくつもの要因が関わるとされています。
後脛骨筋腱障害の症状
また、力が大きく落ちるわけではありませんが、足が疲れやすくなったり、長時間の運動を続けにくくなったりすることがあります。
一方、中高年に多い後脛骨筋腱機能不全では、足の外側に痛みが出たり、立ったときの土踏まずの形が変わったりすることがあります。
内くるぶしの痛みが後脛骨筋腱障害とは限らない
内くるぶしのまわりや足の内側の痛みは、後脛骨筋腱の炎症だけで起こるものではありません。後脛骨筋腱が本来の位置から外れる状態や、舟状骨のそばに余分な骨がある有痛性外脛骨(ゆうつうせいがいけいこつ)などは、見分けにくいことがあります。
自分だけで見分けるのは難しいため、痛みが続く場合、一度、整形外科で診てもらってください。
医療機関で行われる診察と治療
診察と画像検査
医療機関では、まず立った状態で足の形を確認します。後ろから見たときのかかとの傾きや、足の指の見え方、腱の通り道に沿って腫れや押したときの痛みなどを調べます。また、片脚でつま先立ちができるか、くり返しできるかも、腱のはたらきを確かめる手がかりになります。
画像検査では、レントゲンで足の骨の並びを確認し、超音波検査やMRIで腱と腱鞘の状態を確認します。初めのうちはレントゲンに異常が出ないことが多く、超音波検査やMRIで腱鞘の炎症が見つかることがあります。
手術をしない治療
治療では、まずは腱を休ませることが基本です。症状に応じて、ギプスや歩行用ブーツで固定する方法や、足底装具で腱にかかる負担を減らす方法がとられます。痛みには消炎鎮痛薬が使われるほか、腫れを抑えるためにアイシングが行われることもあります。
その後、炎症が落ち着いてから、後脛骨筋の筋力を取り戻すリハビリに進みます。
手術が検討される場合
手術をしない治療を続けても改善されない場合には、傷んだ腱のまわりの組織を取り除く手術などが検討されます。
リハビリと競技復帰に向けた考え方
リハビリでは、後脛骨筋を対象とした運動療法が用いられます。運動療法の効果を比べた研究もありますが、その多くは中高年を対象にしたもので、競技者にそのまま当てはめられるものではありません。どのような運動を、どの程度行うのがよいかも、現時点で一致した見解はありません。
手術をしない治療で良くならず、手術を受けた若い競技者8人を対象とした報告では、7人が競技に完全に復帰していました。ただし、少人数を対象とした報告であり、一般的な復帰率を示すものではありません。
早く戻りたい気持ちは当然のものです。ただ、復帰の時期は、痛みが消えたかどうかだけでは決まりません。足をどれくらい支えられるようになったか、競技の動きに耐えられるか。医師や理学療法士と一つずつ確かめながら、進めていってください。
まとめ|内くるぶしの痛みが続くなら、早めに原因を確かめる
後脛骨筋腱は、内くるぶしの後ろで向きを変え、土踏まずを内側から支えている腱です。向きを変えるあたりには血流の少ない区間があり、腱が傷みやすいこととの関連が考えられています。スポーツでの使いすぎやけがをきっかけに炎症が起こり、くり返すうちに傷みが進むことがあります。
一方で、内くるぶしのまわりには、後脛骨筋腱のほかにも似た痛みを起こす障害があります。痛む場所だけで原因を見分けるのは難しいため、痛みの原因を早めに確かめることが大切です。
内くるぶしの後ろや下の痛みが続いているなら、我慢して練習を重ねる前に、一度、整形外科で診てもらってください。
本記事の情報の取り扱いについて
本記事は、医学文献に基づいて一般的な情報をまとめたものであり、個々の症状に対する診断や治療を示すものではありません。記載した研究の結果は、それぞれの研究が対象とした人たちについてのものであり、すべての人に当てはまるものではありません。足首や足の痛みが続く場合は、自己判断をせず、整形外科など医療機関にご相談ください。治療の方針は、医師の診察と検査に基づいて決められます。
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記事監修・整形外科医

- 毛利 晃大先生
- 順天堂大学医学部卒業、日本整形外科学会会員 日本医師会認定スポーツ医、日本バスケットボール協会スポーツ医学委員会所属ドクター