これまでのオンラインジャーナルでも述べたように、スポーツインソールには足の疲労対策やケガの予防に配慮したさまざまな機能があります。一方で実際に使用してみて、パフォーマンス向上を実感したトップアスリートは9割近くになります。疲労対策やケガの予防のための機能が、パフォーマンスアップにも寄与しているようです。今回はその結果をふまえ、さらにシューズのひと工夫でインソールの効果を高めるヒントをトレーナーの遠山さんに伺いました。

アスリートの約9割がスポーツインソールによるパフォーマンス向上を実感

全国の10～60代のスポーツを実施している一般の男女600名と、国内トップアスリート32名を対象に、インソール導入の実態を調査（2022年）したところ、一般スポーツ実施者でインソールの入れ替えを行っている人は約3割（27.3%）、アスリートでは約9割（87.5%）にのぼることがわかりました。

さらに、アスリートでは約9割（89.3%）は、機能性インソールの導入によりパフォーマンスが向上した、と回答しました。特に「足裏の踏ん張り・身体の安定感・疲労軽減」を実感する選手が多数でした。

足に力が伝わりやすい状態になることのメリット

この調査結果をもとに、スポーツインソールによる足の負担を軽減する機能がパフォーマンスアップとどう結びついているのか遠山さんにお聞きしました。

遠山：かかとをしっかりホールドするとともに、足裏のアーチを強固にし、足に力が伝わりやすい状態にすることで足首やヒザの負担軽減、疲労の蓄積対策に機能させることがスポーツインソールの大きな特長だと思います。調査結果をみると、それが同時に「足の踏ん張り」といった個々の動作のパフォーマンスアップにもつながっていることがよくわかります。もちろん足の踏ん張りがきくようになったからと無理をしたり、インソールに頼るのではなく、トレーニングや練習に合ったシューズを選ぶなど他の要素も含めてレベルアップしていくように心がけましょう。

多くのアスリートが、インソールにより足の踏ん張りがきくようになったと答えています。

他の要素も含めてレベルアップとはどういうことでしょうか。

遠山：例えば「切り返し」動作のスピードは多くのスポーツで求められる要素ですが、これには「足の踏ん張り」だけではなく足の正しい運び方も重要です。走ってきて逆方向に切り返す時に、外側の足だけで踏ん張って切り替えようとするとかえってスピードが遅くなりますし、外側の足への負荷がかかりすぎてケガのリスクも高まります。切り返し動作に必要な、理想的な足の運び方のトレーニングと、インソールによる負荷の低減、そうした要素を総合的に改善していきながらパフォーマンスを高めていきたいですね。

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他の要素という意味ではシューズとインソールの組み合わせにもヒントはありますか？

遠山：シューズの組み合わせというよりは、ひもの結び方を工夫するとインソールの性能をさらに生かせると思います。スポーツインソールの特長の一つに、かかとをしっかりホールドする形状がありますね。かかとの安定性を高めたいのに、シューズのひもの結び方があまいと効果が半減してしまいます。アスリートであれば実践している人も多いと思いますが「ダブルアイレット」という結び方は、正しくマスターすればスポーツインソールによる深いヒールカップとあわさって、かかとをさらに安定させてくれる方法の一つです。ただし、締めすぎもよくありません。前足部は指の動きを阻害しないように少し緩めにし、足首側はしっかり結ばれているというのが良いかと思います。

上から二番目の穴までひもを通した後、一番上の穴に同じ方向からひもを通し輪を作る

それぞれのひもの先を反対側の輪に通す。穴に通したあとで、左右に引っ張るとギュッとしまり固定する

通したひもをひっぱりフィット感を調整し、真ん中で蝶結びをする

トレーナー：遠山 健太さん

ワシントン州立大学教育学部卒業。順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科修了。株式会社ウィンゲート代表取締役。全日本モーグルチームのトレーナーとして、トップアスリートのトレーニング指導に携わってきた一方で、子どもの運動教室「ウィンゲートキッズ」のプログラムを開発するなど、子どもの体力向上についての研究も行っている。家族体力測定イベント「マイスポ」で第11回健康寿命をのばそう！アワード（生活習慣病予防分野）の企業部門において、スポーツ庁長官優秀賞を受賞。著書に、『るるぶKids こどもの運動能力がぐんぐん伸びる公園 東京版』（JTBパブリッシング）、『コツがつかめる！　体育ずかん』（ほるぷ出版）などがある。