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ふくらはぎの柔軟性を高めるストレッチ5選|足首の動きと下半身のパフォーマンスを引き出す基本アプローチ

ふくらはぎは、腓腹筋(ひふくきん)とヒラメ筋を中心とした下腿三頭筋(かたいさんとうきん)からなり、足首を伸ばす(底屈(ていくつ)する)動きを担う筋群です。歩行や走行はもちろん、跳躍や急な切り返しなど、地面を蹴り出すあらゆる動作で力を発揮するため、ここの柔軟性と足首の動きやすさは、下半身のパフォーマンスに直結します。一方で、足首を曲げる(背屈(はいくつ)する)動きが制限されると、しゃがみ込みや走行フォーム、着地動作にも影響しやすくなります。
 
このジャーナルでは、足首・アキレス腱股関節ハムストリングスといった足回りのストレッチを続けて取り上げてきました。ふくらはぎは、その足回りの中でも走る・跳ぶ・止まるといった動作の力を直接やりとりする部位です。足首から下半身全体へと連なる一連の流れの中で、ふくらはぎへのアプローチを押さえておきたいところです。
 
そこで取り入れたいのが、ふくらはぎへ異なる方向と肢位からアプローチできるストレッチです。壁を使って多方向に伸ばす方法、足首の背屈可動域に働きかける方法、拮抗筋(きっこうきん)であるすねの筋肉まで含めて整える方法などを組み合わせることで、下腿全体へ立体的かつ段階的にアプローチしやすくなります。ここでは、ふくらはぎの柔軟性を高めるためのストレッチを5種目ご紹介します。

1. 3Dウォール・カーフマトリクス(3D Wall Calf Matrix)

下腿三頭筋を多方向から、後脛骨筋(こうけいこつきん)まで含めて伸ばすストレッチです。直線の動きだけでなく、3次元(3D)で下腿を伸ばしていくのが特徴です。スポーツの動きは直線だけではなく、骨盤を回旋させたり前後左右にスライドさせたりする場面が多くあります。そうした動きに合わせて上体を動かすことで、ふくらはぎの内側・外側、そして足裏の内側縦アーチを支える後脛骨筋まで立体的にアプローチしていきます。動きを伴うため、運動前のウォーミングアップにおすすめです。

 

1. 壁に両手を突き、片足を後ろに引く

通常のアキレス腱伸ばしの姿勢をとります。

2. 踵を地面につけたまま、3つの動きを行う

踵を地面につけたまま、以下の3方向の動きを行います。
① 上体を前後に動かす(腕立て伏せのようにする)
② 左右に回旋させる(片方の肩を壁につける)
③ 上半身を固定したまま、片方の足を内側・外側に振る
各動作を10回程度行います。

2. ニー・トゥ・ウォール

足首の背屈可動域(Ankle Dorsiflexion)にアプローチするストレッチです。背屈可動域を測定・改善する「Lunge Test」をベースにした、アスリートには欠かせない種目です。ここでは主にヒラメ筋を対象としますが、単に自重でヒラメ筋を伸ばすだけでなく、拮抗筋である前脛骨筋(ぜんけいこつきん)を意識的に収縮させることで、より安全かつ深く下腿三頭筋を緩めていきます。動きを伴うため、運動前のウォーミングアップにおすすめです。

 

1. 壁に向かって立ち、片足のつま先を壁からこぶし1個分離して置く

2. 踵を地面につけたまま、ヒザをまっすぐ壁にタッチさせる

ヒラメ筋が伸びるのを感じます。なお、こぶし1個分あけてもヒザが壁につかない場合は、ヒザが壁につく位置までつま先を近づけて調整します。

3. タッチした状態から、つま先を上に引き上げて3〜5秒キープする

壁側のつま先を上に引き上げる(すねに力を入れる)ように意識して、3〜5秒キープします。

4. 一旦元の位置に戻り、再度行う

片側ずつ5回行います。

3. ベアポジション・ペダリング

下腿三頭筋全体に加え、後脛骨筋や足底腱膜(そくていけんまく)まで連動させて伸ばすストレッチです。ヨガの「ダウンドッグ」をアレンジしたもので、アメリカのアスリートのウォームアップでよく使われます。手で地面を押すことで、体の後方ライン全体を連動させながら下腿三頭筋を伸ばせるのが特徴です。動きを伴うため、運動前のウォーミングアップにおすすめです。

 

1. 四つん這いからヒザを浮かせ、お尻を高く上げて「Vの字」の姿勢になる

両手を床につけて行うことが難しければ、50cmぐらいの台の上に手を載せて行います。それでも難しければ、壁に手を付けて行ってもかまいません。

2. 片方のヒザを曲げ、もう片方の踵を床にじわじわと押し付ける

踵を地面に押し付ける際、わずかに内側に体重をかけると、後脛骨筋への刺激も強まります。

3. これを左右交互にリズミカルに繰り返す

自転車のペダルをこぐように、左右交互に繰り返します。1分間続け、2セット行います。

4. トゥ・イン & トゥ・アウト・ステップ・ドロップ

アキレス腱のストレッチ6選で紹介したステア・ヒール・ドロップス(段差踵落としストレッチ)の応用となる種目です。段差を使ったエキセントリックな負荷はそのままに、つま先の向きを「内側(ハの字)」と「外側(逆ハの字)」に変えることで、ふくらはぎへ満遍なくアプローチしていきます。腓腹筋は内側頭(ないそくとう)と外側頭(がいそくとう)に分かれており、特に方向転換の多いスポーツ種目では左右のバランスが崩れがちです。つま先の角度を変えることで、腓腹筋の内側頭・外側頭や後脛骨筋といった伸ばす部位を緻密にコントロールできます。動きを伴うため、運動前のウォーミングアップにおすすめです。

 

1. 段差に足の前半分を乗せ、踵を上げて立つ

2. つま先を「内側」に向けて(ハの字)、踵を落として水平に戻す

腓腹筋の外側頭と後脛骨筋が強く伸びます。

3. つま先を「外側」に向けて(逆ハの字)、踵を落として水平に戻す

腓腹筋の内側頭が強く伸びます。
内側を5回、外側を5回行って1セットとします。3セット行います。難しい場合は、フルの可動域ではなく「痛気持ちいい」ところでストップしましょう。

5. アンクル・シーテッド・ティビアリス・ストレッチ

すねの前側にある前脛骨筋や長趾伸筋(ちょうししんきん)を最大限に伸ばすストレッチです。アメリカで近年トレンドとなっている前脛骨筋の「最大伸張」ストレッチで、下腿三頭筋を効率よく働かせるためには、ブレーキ役となる前脛骨筋の柔軟性が不可欠です。加速・減速の多いスポーツ種目はすねが張りやすいため、この「足の甲を伸ばす」アプローチはシンスプリント予防にも極めて有効です。じっくり伸ばすため、運動後のクールダウンや日常のケアにおすすめです。

 

1. 正座の姿勢になり、足の甲をしっかり床につける

これだけでも前脛骨筋が伸びます。

2. 後方に両手をつき、両方のヒザを少し上に持ち上げる

心地よく伸びていると感じながら20秒行い、3セット行います。

足首が硬くて強い痛みを感じる場合は、片方のヒザずつ交互に持ち上げるか、ヒザを浮かさずに正座のまま体重を後ろにかけるだけでも十分に伸びます。

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ストレッチを行う際の注意

ストレッチで目指すのは痛みではなく、筋肉がゆるやかに伸ばされている感覚です。痛みを感じたら、それは伸ばしすぎのサインです。痛みのない範囲まで戻し、その位置で行ってください。痛みを我慢して続けると、筋肉や腱を痛める原因になります。 また、反動や勢いをつけて可動域を広げようとすると、かえって筋肉を傷めることがあります。動作はゆっくりと、コントロールしながら行いましょう。 柔軟性には個人差があります。他者と同じ可動域を目指す必要はなく、左右差が出ないよう、両側をバランスよく行うことを意識してください。

※本記事は、スポーツや日常生活におけるカラダのコンディショニングに関する一般的な情報提供を目的としたものです。記載されている内容は、特定の症状や状態に対する効果を保証するものではありません。症状が続く場合や気になる点がある場合は、医療機関にご相談ください。

記事監修・トレーナー

遠山 健太さん
ワシントン州立大学教育学部卒業。順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科博士課程修了。株式会社ウィンゲート代表取締役、博士(スポーツ健康科学)。全日本モーグルチームのトレーナーとして、トップアスリートのトレーニング指導に携わってきた一方で、子どもの運動教室「ウィンゲートキッズ」のプログラムを開発するなど、子どもの体力向上についての研究も行っている。家族体力測定イベント「マイスポ」で第11回健康寿命をのばそう!アワード(生活習慣病予防分野)の企業部門において、スポーツ庁長官優秀賞を受賞。著書に、『るるぶKids こどもの運動能力がぐんぐん伸びる公園 東京版』(JTBパブリッシング)、『コツがつかめる! 体育ずかん』(ほるぷ出版)などがある。